人生: ムダダァー!

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2006.06.04(MOTHER2より)

ムダダァー!

 12年ぶりのMOTHER2だ。
 電源を、ええと電源っていうのは僕の場合家庭用テレビでGBAのソフトが遊べる『ゲームボーイプレーヤー』(ゲームキューブ用)で遊ぶのでつまりゲームキューブの電源ってことですけど、ややこしいですかすいません。GBAは持っているけどMOTHER2はテレビ画面で遊んでこそ華なのだ。意味はわからないのだ。懐古趣味かなんかじゃないですか、自分でもよくわからないけど。
 とにかく電源を入れて印象的なオープニングデモ(*1)を眺めていると、あるひとつのことを思いだす。
 そうだ、MOTHER2は丁寧に作られたゲームだった。

 デモ画面の小さな枠の中でちまちまと動くドット絵のキャラクターを見て僕はやっと思い出した。このゲームは本当に丁寧に作られたゲームだったのだ。
 ドット絵のひとつの頂点というレベルまで描き込まれたデジタルなグラフィック。その中でええっ、こんなモノが動いちゃうんですかっていう新鮮なおどろき。ああもうずっと忘れてたけど、かなり先の方のあの場面でアレが動くんだったっけ。
 スタートボタンを押して名前入力画面。「おまかせ」ボタンを押すたびにいい意味でも悪い意味でも適当な名前が表示される。いやていうかあれ、適当すぎないか本当に。笑っちゃったけどさ、12年ぶりに。
 名前を入れ終わって「おわり」を押すと男の声で「オッケーですか?」と声がする。うわあああそういやそんな演出あったなあこれ。そりゃ当時格ゲーとかで「昇竜拳!」とか「ラウンド1、ファイト!」とか声がしてたからさほど珍しい技術でもなかったんだけど、名前入力の確認のためだけに、それも「オッケーですか?」なんていう力の抜け切った声を入れるなんて常識では考えられなかった。ていうかいま現在でも普通にありえない発想だと思う。そうだ、この意味のないデティールだ! これがMOTHER2というゲームだった!

 MOTHER2の枝葉末節のこだわりは過剰なほど丁寧で、それが実際ゲーム進行にはおよそ不必要な丁寧さだったからこそ、それは貴重だった。こんな無駄なことにこんなに精力を傾けているゲームなんて、他にはなかったのだ。誰も見たことがないゲーム体験がそこにはあったのだ。たとえそれが「オッケーですか?」であっても。
 名前入力のすぐ後に、今にも何かが起こりそうな奇妙な夜の経験が始まる。1人として事務的なセリフ(「ここは オネットの まち です」的なやつ)をしゃべらないキャラクターたちの、しかしおおむねゲーム進行にかかわりのないセリフを楽しむ。ああ本当にポーキーはだめなやつだ。飼い犬の仕草のかわいさにやられる。ドアが馬鹿馬鹿しくノックされる。未来よりの使者は重々しい事実をまったく重々しくない表現で伝える。ポーキーは本当にどうしようもなくだめなやつだ。未来よりの使者を見直すような出来事が起こる。そしてすぐ後に、見直したのはやっぱり間違いだったかもと思わされる。BGMが矢継ぎばやに変わっていく。そして、現われる写真屋。
 そうだ、写真屋だ! 僕は写真屋のことをすっかり忘れていた!
 このあまりにもナンセンスで、たぶん小説でも映画でもマンガでも許されないであろう痛快な存在のことをここであえて詳しくは語りませんが、彼こそがMOTHER2だと僕は思う。あまりにも意味がなく、それでいて重要で、プレイヤーのためだけを思って作られていて、見た瞬間に面白いと思わずにはいられないこの写真屋! これがMOTHER2というゲームだった!

 ゲームは丁寧なまま進み、いま不良集団との抗争に終止符が打たれたところです。もちろん素晴らしく無駄なデティールの積み重ねの末に。

*1 オープニングデモ

オープニングムービーという言葉はこのときまだ無かったし、これはまた確かに広義のムービーとも違うと思う。

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 匿名上等・あいさつ不要・タメぐち有りというルール無用の残虐ファイトがまかり通る悪夢のコメント欄。そこでは管理者の「なんかノリが合わねえ」の一言でコメントが削除される恐怖政治が横行していた。
 その時、この地獄の地にあえてコメントを投稿する恐れ知らずの猛者が現われたのだ! いや、あなたの事ですよ?
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