人生: 「まるで恋をしてるみたい」

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2000.01.16(ゲームの話より)

「まるで恋をしてるみたい」

 ガニラスが強い。群がる3匹はどうにか倒したのに、足踏みで体力を回復している最中にまた一匹が部屋に入ってきて、逃げ切れずに一撃食らって即死してしまった。
 1週間前に買った『トルネコの大冒険2 〜不思議のダンジョン〜』が、どうしようもなく面白い。ハマるような予感はしていたんだ。くそ。ファーラットにも注意するようになって、なんとなく迷いの森はあと一歩って感じだったのに。
 こんなことになると思ってゲーム誌の情報も全部シャットアウトしていたから、何もかも新鮮で謎と驚きにあふれている。どうやれば勝てるんだ、ガニラス。ゲームはプレステの電源を切ってもまだ続く。武器が高いからって節約しすぎたのが敗因だったんじゃないか? どうせ死ねば何もかもナシになるんだから、今度は武器に金をかける方針でいってみよう。金はいくら銀行からおろせばいい? もうストックを食いつぶしかけてるから、あまり倉庫の品に手を出したくはないし……。
 風呂場で頭から熱いシャワー浴びながらなんで緊張と興奮で心臓をバクバクいわせてるのかと気付いたりする。すげえ面白いゲームにめぐり会ったり、すげえ好きな人ができたときぐらいでもないと、こんな経験なんて絶対できない。頭はもうガニラス相手に金の剣かなにかで20ポイント級のダメージを与えている。なんとかして勝ちたい。途中におばけキノコの毒矢を3、4回受けて「ちから」がかなり減ったのもまずかった。ダンジョン内で毒消し草が売ってなかったのが問題なんで、今度は最初から倉庫から出して携帯しておこうか。ガニラスの出てくる階あたりならおばけキノコは出てこないから、その階になって毒消し草を飲めばガニラス対策としてもバッチリだ。でもそれで死んだらそれこそ元も子もなくなる。毒消し草のストックは少ない。どうする? 序盤の階でもっとレベルを上げておく方がいいんだろうか。パンが余る傾向にあるのはこれまでのプレーでよく分かったから……。
 凶暴なくらい簡単明瞭で、それでいて複雑なジレンマ。その隙があるような気がしてもがくのも、やっぱりジレンマのうちだ。ジレンマはロジックどころか面倒くささとか美しさとか感情まで巻き込んで、「出口の見えそうな袋小路」か、「袋小路っぽい出口」に導いてくれる。
 もしかしてガニラスの階を過ぎれば、迷いの森はクリアなんじゃないのか。そんな事を考えて、本当に先がまるで見えてないことに今さら気付かされる。いつ終わるのかしれないゲームをやってるという事実は、バスチアン・バルタザール・ブックスとかいう少年が『はてしない物語』という本を手に入れたときの話を思いださせる。実際、だいたいあんな感じだし。
 風呂場から出るあたりで方針はとりあえず決まった。勝てなかったらまたもう一回考え直してやり直すだけだ。プレステの電源を入れて、ローディング画面を見ているうちに頭の中の余計なことが消えて、『トルネコ』に対する戦闘態勢みたいなものができ上がっていく。その直前のあたりで、願わくばこの興奮がもうしばらく何日か何週間かのあいだ長続きしますようにとかちらっとだけ考える。
 いやまったく神様、どうか願わくば。

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