2000.04.28(テレビの話より)
芸人の鑑
たとえばテレビを観ていて、「こいつだ!」と思える芸人に出会える確率はどれほどのものだろうか。このお笑いバブルの現代(*1)においてもそれは限りなく低い。そんな中、僕の心を震わせたのは他でもない、松尾伴内その人である。
これは冗談ではない。松尾伴内である。元たけし軍団(*2)である。『なんでも鑑定団』とかで出張鑑定の司会をときどきやっているあの人である。笑顔がチャールズ・ブロンソン似の彼である。諸君、誤解してはいけない。彼の司会進行は実によどみなくもツボを押さえている。
トバすところでトバし、オトすところでオトす。これはちょっと気の利いた若手でもできることだが、松尾の場合その呼吸、いわゆる「間」のつかみ方が実にうまい。最近とみにナチュラルな表現が幅をきかすお笑い界ではあるしそれを一概に否定する気もないが、しかし松尾のこの芸を目にした後ではそうも言っていられない。松尾は上手い芸人だ。
たしかに器用な芸人ではないし、たとえば彼がメインに立つ番組というのもちょっとそれはそれでどうかというかんじだ。とはいえ、それが彼の上手さを否定する材料にはなるまい。言ってしまえば松尾にはいぶし銀の魅力がある。今もっとも注目する芸人は松尾だ。注目したところで何かが変わるわけでもないが、やはり松尾なのである。そして松尾伴内はそんな観られ方の似合う、いい芸人なのだ。