2005.06.30(マンガ・アニメの話より)
キカイ(畸界)より愛を込めて
たまたまのぞいた本屋。やけにいかした装丁の表紙にオビが唐沢俊一先生大絶賛という本『キカイ探偵』(福原鉄平 著)を発見。しかしカバーかかってて中は確認できないし連載誌はその本屋に置いてないコミックバーズだしそもそもコミックバーズ読んだことないしで、情報ゼロのまま購入。俗に言う表紙買いである。「ああまた表紙買いなんかしちゃったこんなの失敗するに決まってるじゃんか」とか思いながら。そしたら驚いたことに面白かったというから、表紙買いも捨てたものじゃない。※レアケース
唐沢先生のオビに曰く、「いい若いもんがこんな懐古趣味満載のまんがなんか描いて……最高だよ!」とまでに昭和レトロの薫りに満ちたこの作品。
奇怪な「怪人」事件を専門とする機械の体の青年探偵、銑極超志朗(せんごく・ちょうしろう)の事件簿……かと思えば物語は早々に銑極の事務所に出入りする少女たち「少女探偵團」を主役に据えて脱線、はたまた復帰。ドタバタナンセンスから真摯な情愛物語までストオリイの範囲は幅広く、オマージュにパロディなんでも御座れ。時に莫迦々々しく時に涙を誘う快作とくる。
あえて漫画を漫画で例える野暮を犯せば、『夢幻紳士』でいえば「怪奇編」+「マンガ少年版」といった所でありましょうか。各話のタイトルを並べただけでも「怪人燈」「人形王國の謎」「天使館の妖女」「骨董の鬼の人外魔境綺談」「瓊脂坂の脳汁絞りの家」「福魔術師」「學舎幻圖」「黒雨M」「東京ピラミッド」とくればもう後は推して知るべし。好事家諸兄には堪らない内容となっております。
絵にクセはありますが猟奇でデカダンな旧き善き帝都を描く筆致は精細をきわめ、この作者の筆になるものか目次や中トビラのデザインも洋風モダァン。誰にでもお薦めできる本ではないとは言えど、お薦めせずにはオレヌ逸品で御座いました。
短編連作形式のこの作品、続編も読みたい所ですがどうやら現在作者氏は『満鉄小龍』というこれまたタイトルだけでワクゝゝとしてしまう話を連載中の御様子。こちらも単行本化が楽しみでありますナ。
というかコミックバーズ売ってる店見たことねえ!(結論)