2005.07.25(花と太陽と雨とより)
遥か島を離れて
ついにゲームは終わった。そんな日の日記である。もちろん大事な部分は書きませんよ。朝からいつもと様子が違う。
何人かの人が、これまでのいくつかの疑問に答えてくれる。
でも結局すべての謎に答が出たわけではなく、それどころか彼らの言葉は矛盾すら感じさせる。
まあ、いつものことなんで、気にせず先に進もう。
しばらく行ってなかった施設名を出されて、まったく見当違いの場所を探すこと数分。辞書を引いたりすらもした。よく考えたら説明書のマップにずばり施設名が書いてあった。
とうとう最後までウロウロしっぱなしである。うろつき童子である。人はここまで筆を滑らせることができるものか。
その後も駐車場に行けっつわれてそれがどこだったのか分からないとか、また別の施設内で「あっちに行くとイベントが進行しそうだから、その前にまずこっちに行っておこう」と思ったそっちでイベントが進行することがわかって、また逆走してあっちまで行って行き止まりなのを確認してからまたこっちまで走る、っていう考えすぎの所産をボコボコ生みながら走り回った。最後までこんなもんである。
そしていよいよ最終目的地といえるある狭い場所にたどりついた。思えば、この到底ドラマチックとはいいがたい場所にたどり着くことを僕は渇望していたのだ。ここに着けばすべては終わると信じて。
で、なんかとんでもないことが起きた。
目の前でまったく不条理としか言いようのないことが何の説明もなく起きた。
着地点だと思ってたら、むしろバウンドしてとんでもない高さまで放り上げられてしまった。
わけがわからないままに先に進む。半分は予想通り、しかし半分はさっぱりわけのわからないことになる。
事態は立て続けに迷走し、同時に物語は凄いスピードで整理されていく。
そして……、まあ、その後はいわゆるクライマックスなのでこれ以上この日記に書くことはしないのですが。
ひとつ言えることは、ああやっぱ『シルバー事件』先に遊んどくのが正しい順序だった!ということだろう。それだけが僕の痛恨のミスだ。しくじりだ。まあセーブデータはあるし、シルバー事件終えたらまた遊び直してみるのも一興か。謎の答はぜんぶメモしてあるし。
初めのうちはメモも簡単なものだった。
単に暗号の「数字」を忘れるといけないので(僕は数字が苦手で、3ケタを超える数字は5秒以上覚えていられない。いつのまにか2桁目や4桁目がごっちゃになるのだ)メモしていただけだった。その量、実に1行。
途中から謎解きのヒントらしき言葉も順次メモしていくようになった。終わった後から見てみるとけっこうムダなことも書いてある。これもしかしてヒントかな、と無駄に気を回して書いたムダなメモだ。それが各エピソードにそれぞれ2、3行ほどある。
そして後半を過ぎたあたりから、物語で重要な伏線と思われた言葉もメモするようになった。初めのうちはまだ数行程度だけど、終わりの頃になると十何行も書いてある。1エピソードでメモ1ページをまるまる使っている。どうでもいいけどこのメモ、何も知らない人が見たらとうとう僕がおかしくなったか(これまで以上に)と思うであろうことうけあいだ。なんかスゴい感じの言葉がえらく断片的に書いてある。矢印があっちこっちグチャグチャに引かれている。
これは、そういうゲームだった。
最初のうち、ゆるいテキストとシュールな展開を笑いながら、ヘンな世界に徐々に慣れていき、そのうち起こる変化にドキリとさせられつつ引き込まれ、そしてカウンターで入ってくる黄金の左ストレート級のギャグに爆笑し、最後は脳を揺さぶらんばかりの怒濤の展開でフィナーレを迎える。テキストはあいかわらず時々ゆるい。
後に残るのは美しきロスパス島の風景の思い出。南島の鳥の声が遠くから聞こえるあの島で、僕は確かにスーツに染みこむような熱い陽射しを感じていた。乾いた砂混じりのアスファルトを走った。ホテルに入った時の、涼しい空気が好きだった。ゲームなんだから暑いも何もないだろうが、それでもホテルは涼しかったし太陽は暑く照りつけていたのだ。そういう美しい世界がきちんと3Dのポリゴン空間上に作り込まれていて、僕はその世界を愛した。さらば楽しきロスパス島の日々よ。
ところで最後に、どうしても疑問だったんだけどもしも何かの伏線だったとしたらネタバレになるから、ゲームが終わって確認できるまで書けなかったことについてぜひ言っておきたい。
ガイドブックを読む場面で、いつもページ操作に違和感がぬぐえなかったのだ。というのも、横書きの文章なのにページは「右開き」だったから。
「右開き縦組み」「左開き横組み」というように、本文が横書きの本は左開き(表紙を開くと左方向にめくることになる形)というのが出版界の常識である。そうしないと読みにくいのだ。縦書きと横書きが同居するような本はわざわざ「前半右開き縦組み・後半左開き横組み」にして本の表と裏の両方を表紙にするほどまでに、これは製本上の絶対のルールなのだ。
それがこのゲームのガイドブックでは平気で破られている。おかげでいつもページを先に進めようとして後に戻るはめになっていた。なんだったんだろう、あれは。そしてこのガイドブックを正確に模したという公式ファンブック(現在絶版)はどうなっていたんだろう。狙ってやってたにしろ天然だったにしろ、印刷所の人に「このド素人が!」とか怒られてなければいいけど。僕が心配するのは、ただそのことだけだ。