ファミコン通信の虜: 1986年12月12日号(第13号)

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今回のテーマ

BIWEEKLY
ファミコン通信
1986年
12月12日号(第13号)

ファミコン通信の虜
2005年7月 9日 更新

『ファミスタ』そして『ドラクエII』、年末商戦直前決戦!
魔法の言葉「クソゲー」誕生の瞬間


この号のファミ通TOP30

第1位

プロレス

第2位

高橋名人の冒険島

第3位

悪魔城ドラキュラ

第4位

うる星やつら ラムのウエディングベル

第5位

スーパーマリオブラザーズ

 ディスクシステム専用の最新作『プロレス』が堂々の初登場第1位。今にして思えばボリューム不足の感もあるが、任天堂らしくソツのないつくりのスマッシュヒットだった。
 同じく初登場の『うる星やつら』はアーケードゲーム『モモコ120%』のキャラ替え移植版。2位の『ワンダーボーイ』のキャラを高橋名人に置き換えた『高橋名人の冒険島』といい時々みられる手法ではあるが(この系譜は『対戦ぱずるだま』に繋がっていく)、このゲームでは異星人のはずのラムがなぜか「日本の幼稚園生」から徐々に成長し、最終的には諸星あたると結婚までしてしまうという原作からの逸脱ぶりが注目点。『モモコ120%』がそういうゲームだったから当然といえば当然なのだが、あまりといえばあまりな改変である。

この号の読者が選ぶTOP20

第1位

ドラゴンクエスト

第2位

悪魔城ドラキュラ

第3位

スーパーゼビウス ガンプの謎

第4位

がんばれゴエモン! からくり道中

第5位

メトロイド

 前回7位の『メトロイド』がトップ5にランクインし、前回4位の『戦場の狼』を7位に追い落とす結果となった。
 『ドラゴンクエスト』は変わらぬ好調。この頃情報公開され始めた続編『ドラゴンクエストII』の期待感もあっての得票だろうか。
 売り上げではいまだ根強い『スーパーマリオブラザーズ』が、こちらのランキングでは18位(累計では圏外)とまったく振るわないのは、さすがに当時の小学生ゲーマー達の流行から外れてきたということか。

この号の特別企画

洋子のToKyo Disneyland大冒険

 3回にわたる短期集中連載もこれが最終回。最後までファミ通の誌面から浮いた連載だったが「ポカーンと過ごせてそれで夢いっぱい。そんな時間、きっと体の中をきれいにしてくれると思うの。ゲームを見る目も変わるはずよ。」と、なんとかゲーム誌らしくまとめている。

この号でお別れ 最終回

ファミコン慇懃無礼

 もともと「東京ディズニーランド・インフォメーション」が「洋子のToKyo Disneyland大冒険」に移ってできた空きスペースを利用する形で始まったこの連載。来週からは「東京ディズニーランド・インフォメーション」が戻ってくるので、その意味必然的な最終回を迎えている。
 編集サイドでは当然この入れ替わり劇の予測もついていたはずなので、おそらく初回の反響が大きければ別枠を設けて連載続行という予定だったのだろう(予告でのおたより募集から連載になった「ピーチパイ・ポスト」と似た手法である)。しかし大人の読者層という当時としてはかなりマイノリティを対象にしたこの企画、さほど反響はなかったようでそのまま最終回という結末になった。

ファミ通この号のトピックス

最新ゲーム徹底解剖『プロ野球ファミリースタジアム』
つーわけで今回から、『ファミスタ』野球リーグ開催だ。

 ファミコン黄金期を支えた無類のビッグヒット・シリーズ『ファミスタ』がついに発売となった。名作とうたわれた任天堂の『ベースボール』から3年、アクション性・野球ファン向けのこだわり・そして演出とすべてにおいてベースボールをしのぐ当時の最高水準といえるゲームで、今号のクロスレビューでも9・9・8・9点というずば抜けた成績を残している。
 ファミ通でも目ざとくこの新作ゲームを強力プッシュ。「『ファミリースタジアム』選抜野球リーグ戦」と題して、「ファミ道楽」誌面で編集者たちのリーグ戦の模様を伝える連載シリーズも開始された(おそらくファミ道楽担当で、ファミスタもプロ野球も大好きな豆府屋ファミ坊による企画だろう)。
 発売前のこの時点ですでに「ファミスタ」と略称で書かれているのも、当時としては珍しいパターン。「ファミリースタジアム」では字数が多すぎて記事の規定文字数におさまりにくかったのも理由のひとつだろうか。これが定着し、後にこのシリーズ自体が『ファミスタ』というタイトルに改題されることになる。


ゲヱセン上野の以下同文
いやあ、前回は落ちちゃってスマンねえ。おそらく、大部分の読者はキラレた、と、思ったのではないかな?

 前号で連載を落としてしまった「以下同文」。もしかするとファミ通初の落ちた連載ではないだろうか? それでもリード文は堂々としたものである。
 むしろ連載内容はヒートアップ。新連載のコラム「アルセーヌ鈴木の美しき獲物たち」はアルセーヌ鈴木ことアルト鈴木のごく個人的なお宝を面白おかしく紹介するコーナー。今回は「仮面ライダーのサイン」である。
 さらに「連載小説」と銘打って「地球防衛隊 桂木春夫45歳 -家のローン・息子の進学・老後の不安-」も開始。タイトルでだいたい想像はつくだろうが、落ち着いた文章とハチャメチャな展開のナンセンス小説である。中年オヤジとナンセンスの組み合わせは兄弟誌『ログイン』の伝説的読者コーナー「ヤマログ」を思い出させるが、ゲヱセン上野がヤマログのセンスにあやかったのだろうか、それともこのコーナーはヤマログ担当の金井哲男の文章だったのだろうか? ちなみにこの第1話は、こんな文章で幕を閉じる。

「オレがここまで強くなれたのも、アイツのおかげかも知れないな……」
 さまざまな思いを胸に抱きながら歩く春夫のはるか前方に突如、河馬(かば)の大群が現われた。ふと、気がつくと、体中、河馬の足跡だらけの春夫がそこにいた。


ファミ通町内会
ゲーム用語の基礎知識(改題予定アリ)

 お習字、そして「ファミ通クイズ・格言ボツなのよ大賞」と着々とリニューアルを進めている町内会にさらに新コーナーが登場。それが「ゲーム用語の基礎知識」である。
 主にファミ通編集部やゲーム業界で使われるゲームスラングの紹介と解説を目的としたコーナーで、意外にここを中心として広まったゲーム用語も多い。
 今回紹介された用語は「安藤くん」(今で言う「ボスキャラ」の意。「アンドアジェネシス」の転)、「本人」(今で言う「自機」のこと)、「かたい」(敵の耐久力)、「おもい」(動作が「重い」状態)、「目がチカチカする」(そのまま)など。中でも注目しておきたいのが「くそゲー」という言葉がここで紹介されているということ。クソゲーという言葉の発祥については諸説あるが、少なくとも一般に広まるきっかけはこの記事だったと筆者は確信する。

くそゲー

青少年諸君は、あんまり使ってはいけないことば。一般に、目をおおいたくなるようなゲームをさして使用する。(例、「おまえ、あんなくそゲー買っちゃったの?」)。しつこいようだが、青少年諸君は使ってはいけない。

 ちなみに今号の「指・鍛練道場」でもこんなイラストが掲載されている。ここで旧仮名遣いの雰囲気を出そうとカタカナで「クソゲー」と書かれたのが日本初の「クソゲー」だと思うのだが、どうだろう?

[画像] クソゲーだッ! 気ヲ付け給へ

新着ゲーム通信『ドラゴンクエストII 悪霊の神々』
武器・防具は60種類 200人との会話 なんと怪物は100種類!

[画像] ドラゴンクエストII

 ついに情報公開され始めた(もちろん当時ドラクエ開発チームと蜜月関係にあった週刊少年ジャンプよりは遅い情報だが)ドラゴンクエストIIの速報。
 現在の目で見ればさすがにたいしたことのないスペックだが、傑作『ドラゴンクエスト』の続編であり、しかも安易なマップ組み換え(『スーパーマリオブラザーズ2』のような)ではなくシステム・グラフィック・ボリュームすべて一新しスケールアップしているとあって、当時のファミコンゲーマー達の話題の中心はまさにこれだった。前作からわずか半年というスピード発売のせいでゲームバランスに少なからず難があったこの作品(その反省から『III』の発売は遅れに遅れた)だが、そのいびつさが生む緊張感とも相まって発売後も圧倒的な支持を受けることになる。


新着ゲーム通信
DOG情報局

 第7号を最後にひっそりと消えていった「DOG情報局」の名残だろうか、他の新着ゲームとは区別する形で「新着ゲーム通信」内にDOG情報局がひっそりと復活。実質的には他の記事と大差ない内容だが、広報の人ががんばったのか情報量はやや多めとなっている。
 ちなみにこの回で紹介されているのは『水晶の龍(ドラゴン)』と『ディープダンジョン魔洞戦記』。記事中、前者のタイトルが「水晶の竜」と誤植になっているのはご愛嬌。



編集室から

 年末商戦をひかえて、ファミスタにドラクエIIという怪物ゲームがついに登場しました。思えばこの1986〜87年初頭という時期は、スーパーマリオに始まりドラクエ、ゼルダ、ファミスタ、悪魔城ドラキュラ、メトロイド、リンクの冒険と後の長寿シリーズの母体になったキラ星のようなゲームに溢れていた時期だったんですなあ。

 ところでトピックスのコーナーでふれた「クソゲー」の発祥について補足しておくと、イラストレーターのみうらじゅん氏が(氏の著作でも折りにふれ書かれているように)ファミコン版『いっき』を評して「クソゲーム」と呼んだのがもと、とする説が一般的のようです。ただみうら氏の言葉はあくまで「クソゲーム」であってイコール「クソゲー」かと言えば疑問が残るところ。だいいち氏は話を面白くするためなら誇張や歪曲を平気で書く芸風なので(これまた当人が自ら認める事で、別にけなしているわけではありません。その方が面白いし)、みうら氏の証言はまず疑ってかかるべきではありましょう。
 少なくとも当時、「南青山周辺」(当時のファミ通・ログイン編集部は東京都港区南青山にありました)でゲーム業界人が「くそゲー」という言葉を使っていたのは事実のようです。みうらじゅん氏や、氏が当時師事していた糸井重里氏とログイン編集部はそれほど太いパイプではないにしろある程度交流があったのでこのラインを通じて言葉が伝播したという可能性ももちろんありますが、事実かと言えばはたして? それを示す証拠は何も無いのが現実のようです。
 ひとつハッキリしているのは、当時のゲームキッズである小学生はまず「青年向け」だったみうら氏の著作を読む機会がなかったろうという事、そして今号のファミ通を読む機会は大いにあったという事。この事実をもって編者は「クソゲー」という言葉が市民権を得た瞬間をこの12月12日号(11/28発売)だと断言するのであります。


リンク

ファミコン通信の虜 インデックス

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ファミコン通信の恋人

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コメント

【1】佐倉健二

当時のファミスタは衝撃的でしたね・・・
無個性だったベースボールから大進化!
キャラが個性的で・・・
チラシの裏に、成績表をつけていたのを思い出します。
しかし、パ・リーグのチームが滅茶苦茶なのが
納得行かなかった!

(2013.02.02 01:13AM)

【2】杉浦印字(サイトマスター)

任天堂の『ベースボール』自体が(ファミ通編集部や糸井重里さん周辺で)野球好きに盛り上がってたところで『ファミスタ』は「まだ進化に先がある!」って感じが凄かったですね。その後『パワプロ』が出るまで進化が止まっちゃいましたけど……。
今調べたら決定版化した(と勝手に思ってた)続編『'87』でもまだレールウェイズとフーズフーズは健在だったんですね。そこはちゃんとやってやれよ! って思います。

(2013.02.02 12:50PM)

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