人生: 過去ログ 2006年04月

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過去ログ 2006年04月

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2006.04.22(マンガ・アニメの話より)

夢幻紳士の時間

 たまたま調べ物をした時に見つかった発見なんだけど、けっこう好評だったし意外に知られてない事実みたいだったんで、ここに記す。あ、『夢幻紳士』というマンガを読んでないとさっぱりわからない話です。例によって。

 何の話かといえば『夢幻紳士』(いわゆる少年探偵版)の主な舞台になってるのが西暦何年なのかという話で、まあ実は特定することじたいは結構簡単なのです。こんな具合。
  1. 「上海の夢幻紳士」の回(単行本第2巻)にこういうセリフがある。「六万トン級戦艦の試案図をあっちこっちに売った(大和のこと)」。平賀譲の指揮のもと戦艦大和の設計が始まったのが1936年とされるから、この回は1936年以降の話といえる。ついでに言えば大和の就役は1941年だから、1936〜1941年とさらに限定できる。
  2. 「王道楽土の夢幻紳士」の回(第4巻)には「そーゆー日中関係にヒビ入れるような歌はやめといた方がいいと思う」というセリフがある。つまりこの回は日中戦争より前、すなわち1937年以前が舞台だと断定できる。そして (1) とあわせて考えると、この回は1936年以降1937年以前と一気にせばめられた。
  3. さて「上海の夢幻紳士」の次の話は「年末の夢幻紳士」(第2巻)。この回でいちど新年を迎えている。つまり「上海の夢幻紳士」と「王道楽土の夢幻紳士」の間は最低1年の開きがあることになる。このことから、「上海の夢幻紳士」は1936年の話、「王道楽土の夢幻紳士」は1937年の話と限定されるのだ。
    ちなみに1936年といえば日本では二・二六事件が起きた年でもあり、青年探偵版夢幻紳士が登場する『帝都物語 TOKIO WARS』第一部の舞台でもありますね。まあこれは世界観が別物なんでさすがに余談だ。
  4. (3) で書いた件に戻ると、『夢幻紳士』には新年(または大晦日)を迎える回は他にもいくつかある。順序通りに書くと、
    • 「年末の夢幻紳士」(第2巻)
    • 「師走団欒夢幻家御帰国」(第5巻)
    • 「冬だ見合いだ年の瀬だ おまけもついてる夢幻紳士」(第6巻)
    • 「新春かしましトリオの巻」(第8巻)
    • 「初春公演、夢幻一座の巻」(第9巻)
    という感じだ。1936年の「上海の夢幻紳士」から数えると年またぎの回は計5回。つまり5年経過して1941年になっている計算になる。で、最終話「そーゆーわけで大団円の巻」を見るとまさに真珠湾攻撃が始まっていて「一九四一年」という記述があるのだった。おお、計算がぴったり合うぞ!
  5. あとちょっとあやしいが「めんどうをおこしてくれなきゃいいが / わし年末は忙しいんよ」というセリフがある「百発百中」(第2巻)は多分いちばん最初の年末エピソードだ。つまり「百発百中」以前の話は「上海の夢幻紳士」の回(1936年)から1年引いて1935年が舞台ということになる。
 そう、夢幻紳士は1935年〜1941年が舞台のマンガだったということだ。こうも綺麗に計算が合うとは思ってなかった。たまたま符合しただけかもしれないけれど。
 まあ年またぎを省略した可能性もあるから1935年以前〜1941年ということにしておくのが正確か。
 ついでにもう一丁、年齢についても片付けてみようか。
  1. 「洋上の夢幻家御一行様」(第5巻)で狂四郎が魔実也にこう言っている。「おまえは女に関しちゃ奥手だからなー / わしが十五のころは愛人が五 六人……」。さっきの計算によればこの回は1937年が舞台になるから、1937年時点で魔実也は15歳なのだとわかる。
  2. と、言ってもそのまま順当に年を取ると最終話では19歳ごろという計算になる。そりゃちょっと無理じゃないかしら。へたすると青年探偵と言っていい年齢ですよ。
  3. そこでいったん魔実也から離れて、福音温子の年齢を考えてみよう。「茶わんの思い出の巻」(第7巻)では「もう十五・六年も前になるか 〜 わしの子を孕みおった」というセリフがある。これが温子の誕生と同時期という設定だから、この回のとき(1939年)温子は15、6歳前後ということになる。ところがこの計算でストーリーをさかのぼると、温子が初登場時に浅草でストリッパーをやっていたのが12歳前後になってしまってやっぱり具合が悪いんですな。
  4. 結論。『夢幻紳士』では周囲の時間が進んでも登場人物が年を取らない、あるいは急に年をとるいわゆる「まんが時間(サザエ時間)」を採用しているということになります。
 そういや『帝都物語 TOKIO WARS』でも青年探偵の方の魔実也が1936年から1945年あたりまで足かけ10年近くえんえん青年の姿で登場してましたな。そういう人たちなんでしょうな。
 ちなみにまんが時間説を補強する例にはこういうのもある。魔実也が生まれた年のことだ。さっき書いた通り、1937年のとき魔実也15歳は確定だから、これを単純に逆算すれば1922年生まれという結論になる。ところが……
  1. 「夢幻狂四郎の青春」(第5巻)で魔実也が生まれる前の話が描かれているが、この中で関東大震災が起きている。つまり魔実也が生まれたのは1923年以降。
  2. 「魔実也誕生秘話の巻」(第7巻)では魔実也誕生直前の頃に「大正末期」とナレーションが入ってるので、大正時代が終わる1926年以前とわかる。
  3. (1) と (2) を合わせて考えれば、1923〜1926年のうちどこかが魔実也の生まれた年ということになる。
 計算が合わないのだ。このことからも、魔実也の年齢の進み方は周囲の時間と食い違っているとわかる。まんが時間であろう。やはりまんが時間だ。
 時間といえば、こんな調べて意味があるのかないのかよくわからないことをずっと調べていた僕の時間はどこに行ってしまったのだろう。

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