人生: 会話に歴史あり

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2001.03.10(ドラゴンクエストVIIより)

会話に歴史あり

 2日ほど日記を書かないでいる間に、ある古い話を思いだした。
 それはもう15年前の話。『ログイン』っていうパソコン雑誌が昔あって(*1)、それでRPGのクリエーター三人が集まって対談するっていう企画があったんですよ。なにぶん当時小学生だから詳細なディティールは忘れたんだけどね、こんな会話があったんですよ。

A「今クライ企画考えてるんですよ。パーティーの中で会話できる奴。『お前、あの塔どう思う?』とか」
一同「クライ!」

 なんだかわからないだろうから補足をしておくと、まず当時「暗い」(*2)というのは今でいうところの「オタク」(悪い意味で) とかそういうことを意味している。そして当時、パーティー内のキャラクター同士が会話するRPGというのは存在しなかったのだ。
 町や城のキャラクターが主人公に対してメッセージをしゃべるっていうのはかなり前からあったんだけど、プレイヤーキャラが喋るというのはそうとう先にならないと発明されなかった (「1人称のナレーション」とかは除く) 。意外にドラクエIのエンディングあたりが最初だったんじゃないだろうか、勝手に喋る主人公。
 ましてプレイヤーキャラ同士が会話するなんていうのは夢のまた夢。それは技術的にダメだったとかいうのでは当然なくて、また多分思いつかなかったというわけでもなくて、純粋に「クライ!」から誰もが二の足を踏んだのだろうと思う。
 そういう誰でもしり込みするような未開の荒野に最初に足を踏み入れたのが『ファイナルファンタジーII』で、そういう事ができたのは多分シナリオライターの人が脚本家出身だったっていうことが大きいんじゃないだろうか。素人だったら怖くてできない。で、逆に素人の強みというか、ファイナルファンタジーII〜IIIができるだけ避けるようにしていた「クライ!」要素を (たぶん無自覚に) 前面に押し出して作ったのが『エメラルドドラゴン』(*3)ということになるんだろう。
 全部が全部そうというわけじゃ当然ないけども、キャラクター同士の会話というのは客観的に見るとどこか夢見がちというか、痛々しさがつきまといがちだ。その理由っていうのは説明しづらいんだけど、とにかくそういう側面はやはりあると思う。しょうがないじゃないかあるものはあるんだから。

 で、ドラクエなんですけど。毎度毎度言ってることですが今回のドラクエでは会話するじゃないですか。主人公はしゃべらないけど、まあそれにしてもパーティーの仲間といったらかなり会話するわけで。これがそのわりに不思議とクラく感じない。
 たぶん口調がドラクエノリっていうか、他にまねのできない例の口調だからそう感じないんだと思うんですよ。あの口調ってなんなんでしょうか。若干軽めで素朴な感じの、ややオーバーアクトぎみでひらがなの多い。
 あ、気がついたけどそうかあの口調はマンガ口調なんだ。そうかそうだドラクエIのころの口調ったらかなり鳥山明マンガ(*4)に近いところもあったし。あれって意図的に鳥山マンガに近づけてたのかな。どうなんだろうか。
 とにかくまあ、今回のドラクエがクラくなく、つまりは痛々しくなくできているというのはプレーしてて嬉しいことだった。ドラクエが痛々しくあっちゃいけないという法はないんだけど、しかしまあドラクエはドラクエなのだ。なんだか抽象的な概念で申し訳ないけれども。

 抽象的ついでに現在のゲーム進行を抽象的に書くと、地中深くに潜ったところです。こ、これってもしかしてけっこうなクライマックスなんじゃねえの!? とか不安になりながら。

*1 昔あって

今もあります。全然違う雑誌だけど。

*2 暗い

しかし当時はしばしば「クライ」と表記していたが、なんだか泣いてるみたいだ。今だったら「クラい」と書くのだろう。

*3 『エメラルドドラゴン』

この会話に限らず、色々と野心的な試みをした作品でその意味評価は高いが、トータル的に後のゲーム界に及ぼした罪の重さも馬鹿にならない量になっていて、なかなかこのゲームの評価は難しいところだ。

*4 鳥山明マンガ

『Dr.スランプ』とか『ドラゴンボール』(初期) とか。

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