人生: 死んでもそんな目にだけは遭いたくない

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2001.05.05(本の話より)

死んでもそんな目にだけは遭いたくない

 もうゴールデンウィークも終わりかけの時代に入りまして、そろそろ5月病の時期ってやつですか? イエーイ! 盛り上がってますか? 5月病! それにしても、なんて書き出しだ。
 そんな時期に私が満を持して皆様に送る、5月病対策。題して「死んでもそんな目にだけは遭いたくないと思った小説大賞」! えーと。いや、正味の話こういう悲惨な事態を高らかにうたいあげた小説を読んで、オレなんてなまっちょろいにもほどがあるゼ、とか思ってここ一発奮起してもらおうとか別にひとごとだしどうでもいいとか、そんな意味あいなのです。

第3位『タリスマン』スティーヴン・キング ピーター・ストラウヴ 共著
 キング作品の中でもかなり特殊な位置づけの本作、なんかあらすじを書くと単なるトンデモ小説の紹介になってしまいそうなので書けませんが、とにかく主人公の少年が常に悲惨な状況に断固として置かれるその気分の悪さたるや他のキング作品を楽勝で凌駕しています。ピーター・ストラウヴがすごいのか。まずかったのか。ちなみにこれ異世界が舞台のファンタジー小説だったはずですが、作中で一番こんな目にあうくらいなら死ぬね俺、と最も強く思ったのは現実世界の安酒場で働かされるくだりでした。いいのか、それで。

第2位『Uボート』ロバート・ギュンター・ブーフハイム
 狭い! 汚い! 死ぬ! の3拍子が無駄に揃った世界、それがUボートです。映画版もたいへん悲惨でしたが、この原作は厚めで文字小さめの文庫本2冊まるごとえんえん悲惨な事態の描写についやされているという点で圧倒的といえます。黙っていても雷撃、逃げても雷撃、沈む、あと爆撃と銃撃、という前後左右どこを見渡してもろくなことのないその悲惨っぷりは他に類を見ません。作中どこをとってもこんな目にあうくらいなら死ぬね俺、と思えるのは画期的です。

第1位「海の男・ホーンブロワーシリーズ」セシル・スコット・フォレスター
 海軍提督ホレイショ・ホーンブロワー! 世界で一番まじめで責任感が強く苦労性で心配性な男の名前! そんな男が主人公で、そして当然ながら死者あふれる海戦! 死者あふれる大嵐! 死者あふれる陸戦! 伝染病! 恋愛すらもロマンチックというよりは生死がかかっている! そんな中を責任の重圧でまいりそうになりながら、でもよりによって不屈なのでダメにもなれずつらいまま戦うホーンブロワー提督! しかもそれをおくびにも出さず! なんかもうなんて声かけてやったものやら。ホーンブロワー提督に。そんな話が全10巻ばかり続くというから、悲惨さの満漢全席のような具合です。こんな目にあうくらいなら死ぬね俺とかそういう以前に、たぶん確率的にこんな目には絶対あわないだろうからああ幸せだなあ僕は、とか思えるほどに悲惨です。

 そんな具合の僕のオススメ小説ベスト3なわけですが、なんかどうしようもない。あと、これだけ悲惨なのに読んでて物凄く面白いっていうのはちょっと異常だと思った。あらためて。
この文をリアルタイムで読んでる人はすぐわかると思いますが、ちょうど昨日テレビで映画版『Uボート』やってたので思いつきました。

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