人生: 判断に困る

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2002.07.01(ZORK Iより)

判断に困る

 さて今日は珍しくゾークをすることにして、とりあえず昨日の続きである。
 昨日は例の謎めいた「白い家」の窓を開けたところで終わっていた。ここで中に入らなければウソという展開だが、僕はあえて入らないのだった。

 あー、入るのが当たり前という気はしますよ、そりゃ僕としても。でもこう、まだ準備が足りてないというか、正味まだ家のまわりを一周しただけであって、家から東西南北あちこちに向かって伸びている (らしい) 道の先に何があるのか気になってしかたないのだ。というか、思うにこの四方の自然である程度ものを拾ったりなんなりしてから、家に入るというのが順序として正しい気がする。拡散→収斂というゲーム一般に通じる流れとして、そういうのが正しいと思える。
 言ってみてから思ったんだけど、このゾークって「ゲーム一般の流れ」がまだできあがる以前に作られたゲームだったから、この理論は通用しないかも。まあいいや。

 そんなわけで僕はいったん白い家のことは放っておいて、家の周囲を囲む形の forest すなわち森に足を向けたのだった。
 曲がりくねった道 (←ゲーム中でそう描写されていた) を通ってたどり着いた場所は、いややっぱりまだ森の中だったんだけど、他と違うことには巨大な木が立っていたのだった。
 木かあ、と僕は思う。わざわざ森の描写と別口で巨木が描写されている以上、この木にはゲーム上特別な何かがあるようだ。というか、これはやはり登れということなのだろう。
 ためしに look at tree (木を見る) してみると、低い場所から枝が生えているとくる。これはもう間違いなく枝を登れという意味であろう。
 それはわかる。わかるんだけど、僕はけっこうに躊躇する。
 なにしろこの木の先に何があるのかさっぱり分からないのだ。可能性という意味では登った先の木の幹に大穴が開いていて、その中に入るといきなり地下帝国に落ちて本格的に冒険が始まってしまうこともないとはいえない。いやそれは考えすぎかもしれないが、何層も何層も高いところまで木が伸びていて、予想以上の大冒険になってしまうことはありえる話だ。さっきも書いた通り、今日は森を散策しようと思っただけなのであって、そんな大冒険は心情的に僕の手に余るのである。心情的にはスペランカー並の冒険心なのである。
 あーどうしようかなーとか思いつつ、まあこのまま放っとくのもなんなので climb tree (木を登る) してみましたよ例によってドキドキしつつ。
 これまで東西南北という平面移動だったのが急に「上」という三次元的な移動になったことに結構な違和感を覚えつつ木を登ると、そこは木の中腹だった。←ふつう
 look (見る) してみたところ、枝が自分の身長より上にあるので、これ以上先には登れないらしい。ある意味ではセーフ。というか僕は冒険を求めてゾークを遊んでいるはずなのに、なぜここまで冒険を恐れるのだろうか。

 まあそれはさておき、問題は別にあった。僕のすぐそばに、鳥の巣があったのだ。
 鳥の巣。なぜかちょっといい話が始まりそうなイメージの言葉である。ここに雛とかいう言葉が追加されれば、もはやいい話はすでにスタートしていると言って過言ではない。
 しかしこの場合、そういう雰囲気ともちょっと違った。このあたり僕の訳がおぼついてないので原文を先に書くと、こんな具合だった。
In the bird's nest is a large egg encrusted with precious jewels, apparently scavenged by a childless songbird. The egg is covered with fine gold inlay, and ornamented in lapis lazuli and mother-of-pearl. Unlike most eggs, this one is hinged and closed with a delicate looking clasp. The egg appears extremely fragile.
 「高価な宝石で飾られた大きな卵」(正確には卵型のモノなんだと思う) が入っているようなのだ。なんだそれ。で、それはどうやら「子のない鳴き鳥」がゴミからあさったものらしい。ゴミをあさったからってどうやってそんなオモシログッズが手に入るのか、僕にはよく理解できなかったが、まあ彼がそう言う以上そうなんだろう。誰なんだ、彼(*1)
 で、その卵は高純度の金の象眼(*2)がしてあって、ラピスラズリと真珠で飾りがしてあるのだそうだ。なんか知らないがとにかくすごそうなことは確かだ。
 さらにこの卵、「精巧な (壊れやすそうな? どっちの訳を採ればいいのか僕には分からない) 留め金のちょうつがいで閉じられている。この卵は極端に壊れやすそうだ」ときた。
 こういう極端に珍しいものがポンと置かれていたのだった。
 どうしろっていうんだ。
 いや、これは昔のテキストアドベンチャーであって、そういう変なものが余裕で道に落ちているものだというのはわかる。わかるけど、結局だからこの変な卵型のものはなんだっていうんだ。
 とりあえず「極端に壊れやすそう」な点に気をつける意味でいったん save (セーブ) して、take egg (卵を取る) してみた。
 普通に手に取れた。うーん。
 open egg (卵を開く←なんか変な表現) してみたものの、非常にもってまわった表現で例の彼に「無理」とか言われた。どうでもいいけど、例の彼はしばしば失敗に終わる行動に対して、やたらもってまわった表現で答を返すんだが、そのイヤミな癖はやめてもらえないだろうか。彼にどう言ったら分かってもらえるのだろうか。←無理
 なんだこの妙な卵。もちろんゲームが進むにつれて何らかの意味が出てくるのだろうけど、今のところ僕にはさっぱり分からない。この判断に困る感じがまた同時にとても楽しいのだけれど、

 とかいう感じで話をまとめて筆を置こうとしたのがたった今。
 で、ふいに思った。
 いまこのゲーム中、僕は高い場所に立っている。ここで卵を落としてみたら、どうなるんだろうか。
 こうしてはいられない。終了していたゾークをもう一度開いて、セーブファイルを開く。drop egg (卵を落とす) してみる。
 割れた!
 やってみるもんだなー、と思いながら木を降りてみると、見るも無残に (その様子がたっぷり6行に渡って描写されていた) 壊れたハト時計が中に入っていた。
 というか、たぶんこれ、僕がいま落としたせいなんだろうな。
 いいのか? これ。なんとなくこの、落とすという行為は一見正解に見えて実は間違いで、後でこれが響いてくるんじゃないのかという気がする。「壊れたハト時計」がなにかの役に立つとはどうしても思えないのだ。
 それを言えば、「壊れてないハト時計」だって何の役に立つのかわからないけど。
 とりあえず木の上から落とせば卵は壊せるということがわかったから、今のところは変にいじらないで、もっとちゃんとした開けるための道具 (たとえば鍵であるとか) を探した方が無難だろうな。と考えて、結局セーブファイルをロードしなおす。
 結局なにもわからないまま、僕は変な卵を手にして木を降りたのだった。

*1 誰なんだ、彼。

この「アドベンチャーゲームの説明役」ってやっぱりテーブルトークRPGのゲームマスターなんでしょうか、元は。

*2 象眼

この「inlay (象眼)」って表現は、もしかして「in lay (産卵して)」とひっかけた洒落なのかな、と辞典引きながらちょっと思った。

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