人生: 広い世界

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2002.07.05(ZORK Iより)

広い世界

 今日は本気で感動してしまった。まさかゾークで感動があるとは思ってもみなかった。驚きだ。不意打ちだ。だってゾークだよ? ただ look (見る) とか get (取る) とかばっかりで進むしキャラクターとかも多分「金にがめついドワーフ」とか「殺人ゴブリン」とかしか登場しないし、しかもテキストのゲームだよ? それでもそこに感動はあったのだった。

 それはいつもの通りに森を散策していた時の話。
 高い木で囲まれた道をあっちに行ったりこっちに行ったりしていたところ、ある時ふいに森がひらけたのだった。
 どうやらこの森は高い丘陵上に広く位置しており、その丘のはじっこにして森の終端、ガケみたいな場所に僕は立っていたのだった。
 そしてそのガケの上から見える、初めて木々にジャマされなく辺りを一望できるその風景に僕は圧倒されたのだった。
You are at the top of the Great Canyon on its west wall. From here there is a marvelous view of the canyon and parts of the Frigid River upstream. Across the canyon, the walls of the White Cliffs join the mighty ramparts of the Flathead Mountains to the east. Following the Canyon upstream to the north, Aragain Falls may be seen, complete with rainbow. The mighty Frigid River flows out from a great dark cavern. To the west and south can be seen an immense forest, stretching for miles around.
 なにしろちゃんとした翻訳ができそうにないので原文をそのまま載せているけど、この雄大な自然の描写に僕はもう本気で感動しちゃったのだった。

 ここで書かれてることっていったら要するにただの風景描写なんですよ。でもなんつうか、「この世界、森だけじゃなかったんだ!」的な驚きと、あと辞書と首っぴきで1単語ずつ読んでいくせいで徐々に少しずつ、あーいわばカメラがなめらかに遠景になってくように明らかになっていく光景と、そういう効果で僕は心底この風景に感動をおぼえたのだった。
 いやえーと、それも本当なんだけど、もうひとつ理由はある。ガケを降りることができたのだ。
 というのは、この雄大な自然に近付くというか、中に入ることができたのだ。
 わかりにくいか。つまりだから、僕はこのゲームの世界が森だけで完結してると思い込んでたのだ。これまでいくら歩いても、森の中とあと例の白い家より先の世界には (家の中はともかくとして) 「木が邪魔している」だの「道が途切れている」だのの理由で出ることができなかった。そういった理由から、おそらくこのゲームでは森までが行動の限界だと思っていたのだ。当然ながらガケはガケであって、つまり「ガケがあって先に進めない」という一種の方便だと思っていたのだ。
 それがどうしたことだ、このガケを降りて川を下ることができるというのだ。
 世界は思っていた以上にはるかに広い。世界の広さそのものに僕は感動して、save (セーブ) したのだった。

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