2002.08.25(マンガ・アニメの話より)
妄想吸い込まれ
という訳 (前回参照) で調子こいて松本大洋の『GOGOモンスター』を買ってきました。今まで買ってなかった理由:
1. 高い (?2500)
2. それでいて書き下ろしなので、どんな内容なのかよくわからなくて不安
3. そもそも本屋どこ行っても置いてない
思うに、出版社のガッツが足りないのが全ての原因のように思えますが、まあいいや。
そんなこんなでどんな話なのかさっぱり知らずに買ったんだけど、まあばくぜんとしたイメージではほのぼのとした話かなーと思ってたんですよ。子供がテーマでしかもタイトルが「GOGOモンスター」だし。
それで読んでみたら、もうすっかりディープな気分になっちゃって、これはどうなんだろう。いったい誰がこの日曜のまっ昼間から心の暗闇をかいま見た僕の補償をしてくれるのかって話なんですけど、本当にもう少し出版社に内容を伝える努力があっても良かったんじゃないかって思うんだけど。
僕に言わせればっていう前提で話しますけど、この話って要するに「妄想吸い込まれ」(*1)の話ですよね。
あー妄想吸い込まれというのが何事なのかって話から始めないといけないから、少しこの話長くなるんですけど。
たとえば、超能力吸い込まれ。信号機とかあるじゃないですか。あれをじっと見つめてると超能力によって信号が赤から青に変わる「ということにする」とします。もちろん放っておいても変わるんだけど、じっと見つめてると変わるんだって! 多少早く。マジでマジで。という妄想。
妄想というか、まあちょいとした思いつきですよ。あくまでも想像ですよ。本人もわかってやってますよ。でも実際の話、妄想じゃなくて現実に超能力で多少早く信号が青になってるかもしれないじゃないですか! なんで力説してんのかよくわかんねえですけど、そういう具合にこの妄想の怖いところは「可能性が否定できない」っつうところなのです。
本人の気持ち的には、もうその超能力が妄想かどうか証明できないんですよ。科学的な「証明」の定義としてはおかしい話なんですけど、そういう次元の問題じゃないんですよすでに。むしろその意味ではすでに超能力が現実にアリになってて、逆に怖いのはその超能力が現実である以上、信号機があって渡りたいなら、じゃあじっと見つめればいいじゃん! と直で思っちゃうっていう。下手をするとじっと見つめないかぎりこの信号変わらなくて周りに迷惑がかかるんじゃないかって所まで話が進んじゃうっていう。妄想が現実を規定するっていう、ええと言ってる意味わかりますか?
これがいわゆる妄想吸い込まれですよ。そんな話でしたよGOGOモンスターは僕が思うに。
で、このマンガのスゲエよくできてるというか意地が悪いというかそういうところがあって、妄想はあくまで妄想扱いで描いてるかと思うとそうでもなく、逆に凝れ妄想じゃなくて本当は現実じゃねえかって匂わせる描き方もところどころしてるんですよ。意図的に。たぶん。
そういうの読むと、読者的にもこれが妄想の話なのか、それとも妄想とみせかけて現実の話なのかわかんなくなるじゃないですか。その気持ちっていうのはつまり妄想と現実の区別があやふやになった、まさに妄想吸い込まれ状態なんですよ! 読者まで妄想吸い込まれ状態にさせてやがるんですよこのマンガは!
もちろん間にマンガがクッションになった、いわばバーチャルな妄想吸い込まれなんで現実に実害はないんでおおいに結構なんですけど、じゃあ何も知らずに読んですげえディープな気分になった僕の心の補償はどうなるって話ですよ。
妄想吸い込まれド前面のハードな話だって最初に誰かが言ってくれてたら、僕もそれなりの心構えして読んで、ちゃんとこのマンガの怖くない面? ユキとマコトの子供らしい友情とか、凄くリアルでセンチメンタルな学校の描写とか、素直に楽しめたと思うんですよ。もうそういうの楽しむ余裕とかないから、大変でしたよ今日の僕のディープ気分ときたら。
あーしばらくは読めないわ。面白いし名作だと思うんだけど、もうお腹いっぱい。