2003.03.18(アヌビス -ZONE OF THE ENDERS-より)
ハードボイルド
あえてどのあたりとは言わないが例の場面では、ちょっとジンときた。世の中シナリオ表現にもいろいろあるけど、おおざっぱな分類で言えば饒舌なシナリオと寡黙なシナリオの2種類があると思う。饒舌なシナリオの (現時点での) 究極の形を多くのギャルゲー等でおなじみノベルゲーム形式とするなら、一方で寡黙なシナリオの究極形というのは、最初から最後まで無言というやつだろう。ゼビウス(*1)とか。
いやこれはいたって真面目な話、言葉以外にもシナリオを表現する方法というのはあるわけで、ゼビウスにはたしかに物語があった。まあそれは極端な話として、できるだけ言葉をきりつめてもなお豊かな物語性をかもし出すことは可能なわけで。たとえば『ファイアーエムブレム』なんかは特に第一作なんか誰も彼もほとんどしゃべらないのに、そこに豊かな人間関係をプレイヤー誰もが見いだすことができるという好例ですな。
で、アヌビスはどうかといえば間違いなく寡黙型だ。このゲームに出てくるキャラクターはたいてい必要以上のことをしゃべらない。ストーリー展開を理解させるためのいわゆる説明ゼリフを削ったら、もう本当に何が残るのかというぐらいにぎりぎりのセリフ量にしぼっている。そこが主人公の渋さとあいまって、ゲームをぐっと渋めなトーンに抑え続けているのだ。ああというか主人公にただ思い付いただけのセリフをべらべらしゃべらせていったい渋くしたいのか頭悪く見せたいのかさっぱりわからないようなシナリオを書く誰かがとてもそばにいるにも関わらず、こういう抑えたトーンを保ち続けたアヌビスのスタッフはとても偉いと思う。ちょっと余計なことを書いてみた。
まあとにかくそんな簡潔なセリフの応酬の中で、たまにふと横道にそれてこれまた簡潔になにか大事な感情を表現するセリフというのが、僕はおおいに好きだ。余計な説明は無用、たったひとことで思いの丈を言い切る言葉のマジック。アヌビスにはそれがある。あのシーンではちょっと、ぐっときたね、僕は。実際の話。