2003.12.28(映画の話より)
全米震撼
「興奮した観客が『すごく面白かったです!』とか言うCM」。あれほど見る気をなくすCMはないと思うのですが、まあ、今でもよくあるくらいだからみんなあれでメチャメチャ見たくなってるんじゃねえの?(なげやり) もちろん映画の予告の話ですよ。この間テレビ見てて「単純にすげえな」と思わされたのが、『すべては愛のために』のCMだ。えーと基本的に恋愛映画って見ないんでよく内容覚えてないんですが、なんかこうしっとりしたいい声のナレーターが真面目な惹句を読み上げるわけですよ。だいたい「えっシュワちゃんが妊娠!? な〜んてコレ映画のお話」の真逆みたいな感じで。そうか感動的な話なのか僕は見ないが君は君でがんばれという感じですが、その感動的なラストに彼はこう付け加える。「泣けます」 もちろんしっとりしたいい声で。
そのなんだ、今の観客が(今に限ったことかどうかはよく知らないが)「泣ける」映画に強く惹かれるというのはわかる。ただなんていうか、しっとりしたいい声で言う「泣けます」には、説得力が100%ない。
これはいい声であることが問題なのかもしれない。「いい声」というのはつまるところ紳士の発する声(ちんぴらがいい声を発した例を私は知らない)であって、そして紳士とは涙を見せないものだからだ。仮にジョージ・ジョースター卿(*1)が「泣けます」と言っても、「そうかなあ」と我々は思うのではないか。まあジョースター卿は奥さんの形見の指輪が戻ってきたときに泣いてましたけど(よけいな横道にそれる)。
じゃあここはいい声じゃなくむしろ映画で泣くことに違和感のないキャラクターを持ってくれば良いのだろうか。たとえばCMのラストで、映画を見終わった観客が顔をくしゃくしゃにしてこう言う。「泣けます」 説得力はあっても、見たくなくなるに違いない。それならこうしたらどうだろう。CMのラストでしっとりしたいい声の男が男泣きに涙を流しながら「泣けます」と言う。もう何の映画かさっぱりわからないけど。
つまるところ本当に泣ける映画なんてのは実際に泣かせる映像満載であろうから、こんな不自然な「泣けます」を入れる暇があったらいい映像を見せて直感的に理解させる方がいいに決まってるし、なんていうか、CM作ってる人って、すげえな(脳の構造などが)って思わされたわけですよ。
ていうかね、『すべては愛のために』ってたぶん言うほど恋愛映画じゃないよ。必死に恋愛映画っぽく見せてるけど、原題は『BEYOND BORDERS(国境を越えて)』だし。もちろん別に国境を越えた恋愛じゃないし。つうかアメリカ版の予告編はこんなだし(*2)。これ見てから日本であんな紛らわしい邦題つけてこんな能天気な企画やってるの見ると、ああ大変そうだな(地獄の閻魔様が。これから)って思わされて、泣けます。←もちろんこれが言いたかった。