2005.07.28(シルバー事件より)
画面は踊る
やられた。まさかこんなに「技」にあふれたゲームだったとは。
正直に言えばこのゲーム遊ぶ前は、画面写真を見てなんとなく地味なゲームなんだろうと思っていた。画面は暗く黒一色で、その上に小さなウィンドウがぽつりぽつりと置かれている。ウィンドウはどれも四角形を基調とした遊びのないデザインで、メッセージウィンドウもこれまた黒地に長体のかかった文字。かといって落ち着いたデザインかと言えばそうでもなく、どっちかっていうとウィンドウがあちこちに散らばっててどこがメインなのかもよく分からない。総じてこれほどキャッチーさに欠けるゲーム画面もそうそうあるまい。
と、思ってたら全然違ってた。
うわ何この発明。
百聞は一見に如かず。ゲーム始まってすぐのあたりの動画をキャプチャーしたので、このゲーム遊んだことない人はまずはこちらを見てほしい。強烈にサイズを小さくしてるので画面が汚い上に動きがカクカクで音も消してますが、雰囲気はだいたい伝わると思う。
アスキー/グラスホッパー・マニュファクチュア『シルバー事件』より
要するにこのゲーム、画面中すべての要素が「動く」のだ。普通のアドベンチャーゲーム的なこの位置はメッセージウィンドウ、この位置はグラフィックとか、そういう発想で見ることが間違ってたのだ。
かといってただにぎやかしに動いてるわけではなく、基本的には「その時注目すべき場所」が動くようになっている。つまりプレイヤー的には、動いた要素に目をやればいいという大変シンプルで明快なインターフェイスになっているのだ。まあ、ある程度の動体視力は必要になりそうだけど。
そしてこの「動き」がちゃんとゲームの演出として成立してるというのも大事なところだ。たとえば緊張感が上がってく場面なんかだと、はじめは画面の一要素でしかなかった「顔ウィンドウ」が徐々に他のウィンドウを押しのけて画面の中心になっていく。これを見ているプレイヤーにとっては「他のものが見えなくなっていく」状況で、自然に緊張感を感じるようになっているのだ。背景で明滅する水色の英単語も、一見無意味に明滅しているだけのように見えて実は場面の雰囲気に合わせて出現・消失のテンポを変えている。演出のために計算し尽くされた画面表現、と言っていいだろう。ずいぶん真面目なことばっかり言書いちゃいましたが。
近いところだと『行殺 新選組』なんかは、顔ウィンドウの動きでキャラの動きや掛け合いを表現したりしてましたが(キャラAがキャラBを殴る時、キャラAの顔ウィンドウがキャラBの顔ウィンドウに向かって突進したり)、ここまで縦横無尽に画面要素全てを駆使した演出というのは僕の記憶にはない。
これ実際すごい発明だったと思うんだけど、まったく後に続くゲームが出てこなかったのは、たぶん革新的すぎてそのまま使うとパクリになってしまうっていうのと、あとたぶん静止画で見ると全然すごさがわからないっつうかむしろ引くっていうのが理由なんでしょうな。もったいない。
あ、ちなみにゲームの方はチュートリアルを兼ねたイントロダクションを終えたところです。これからいよいよゲームは本題に入るのだろうか。
*1
Windowsで再生するにはQuickTimeが必要です(すでに入っていれば問題なし)。わざわざインストールするのも面倒な話ですが、無料だし今後いろんなコンテンツ観るのに損はしないんじゃない? 多分。