人生: 苦渋の選択

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2005.08.09(サイレントヒル2 最期の詩より)

苦渋の選択

 疲れた。
 もううんざりだ。こんな苦しみはもうごめんだ。
 そんな感じの今日のゲームだった。
 やや具体的にゲーム進行を表現すると、歴史をひもとくつもりでやって来たらなんだかいつの間にやら罪と罰に関連する施設内に。まあよくあることだ(ないけど)と思っていつも通り拾った地図を片手にひと部屋ひと部屋開けてったら意外に早く探索完了。最後に残された扉を開くと、その先には……なんつうかいろんな意味で深い闇に落ち、そしてどことも知れぬじめじめした場所の中で色々な意味で深遠をのぞき、ああ……うんざり……そして、2度目のしょんぼり。という感じだった。
 あ、うんざりしたって言っても、それはそれで面白いんですよ? つまらなくてうんざりしたんじゃなく、演出にほとほと振り回されたということですよ。

 ゲームならではの演出技法のひとつに、選択肢を使った演出というものがある。
 わざとサイレントヒル2とまったく関係ない例を出すけど、たとえばノベル系アドベンチャーゲームで敵に襲われたとしよう。その時、普通はこんな感じの選択肢が出る。
  • 闘う
  • 逃げる
  • 話し合う
 ものすごくシンプルな例だけど、だいたいこんな感じが常道といえる。だが、同じシチュエーションでもこんな選択肢のパターンも考えられる。
  • 殴りかかる
  • 銃を抜いて撃つ
  • 投げ飛ばす
 この例ではどの選択肢もつまるところ「闘う」ことしか示していない。もちろん選択によって結果は変わるだろうけれど、「逃げる」とか「話し合う」という方針がはじめから無視されている。
 制作者側が意図的にこういう選択肢を出すとき、そこにはこの状況で「逃げる」とか「話し合う」というのはありえない、というメッセージが込められている。主人公はこういう状況で断固闘うタイプの人間だとか、逃げたり話し合ったりするヒマなんかないほどせっぱ詰まった状況だとか、そういうことを示したいとき、選択肢はこういう風に限定される。
 こういう狭い選択肢を前にすると、プレイヤーは無意識のうちに今はこれしかできないのだと理解し、今がこういう状況なのだと実感として把握するのだ。
 もっと端的な表現として、こういうのもある。
  • 闘う
 選択肢がひとつしかない。もう闘うほかにないのだ。どんなに考えてもこれ以外の選択肢はいまありえない、この選択肢(1つしかないけど)にはそういうメッセージが込められている。
 プレイヤーは、他に選択肢はないのか!と納得いかないかもしれない。だけど実際他に選択肢がないんだから、結局は納得せざるをえない。闘うしかないのだ。
 これが選択肢の限定という演出技法である。

 もちろん今日遊んだサイレントヒル2でこの手の選択肢が出たわけではない。ないんだけど、ゲームを進めるために「ある行動」をプレイヤーがとらなければいけない場面というのが出てくる。それはすなわち選択肢の限定にほかならないのだ。だって、他のことやってもゲームは進まないんだし。
 僕はその行動をとった。こんなことをするのはどうかしてる証拠だと思いながら、それでもその行動をとらざるをえなかった。また別の場面でも、選択肢は他になかった。ありえない、こんなことをするのは正気の沙汰ではないと思いながら、それでもやるしかないのだった。また別のある場面でも、あきらかに狂った行動をとるほかなくなっていた。もはや無感動にその道を選ぶ。こうしてプレイヤーは狂気の深遠へと強制的にひきずられていくのである。
 強制的に、と言っても俗に言う「強制イベント」とは違ってあくまでもプレイヤー自身が能動的に動かないといけないというのがこの演出の勘所で、強制イベントのように「勝手にやられる」のとは話が違うのである。みずから狂人にならんとして行動せねばならないのである。どこの吉田松陰かと言いたい(知恵者つっこみ)。おおげさな言い方をすれば、プレイヤーは狂気を「体験」するのである。なまじファンタジー感の少ないこのゲームだけに、これは精神的に消耗させられる。まったく、なんてひどいゲームだ(ほめてる)。

 そんな感じで、もはやジェイムス(主人公)はゲームが始まった頃のさえなくはあるが正気で、他のキャラクター達見て「うわ、この人マジでヤバいわ付きあってらんねえよ」とばかりに引いてた頃のジェイムスとはもう別人なのである。そりゃーこんな悪夢と絶望の王国(東京ディズニーランドの真逆)にいたらそうもなるだろうけど。
 いったいこの先、彼はどうなってしまうのだろうか。推測だけど、幸せにはならないと思います。

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 匿名上等・あいさつ不要・タメぐち有りというルール無用の残虐ファイトがまかり通る悪夢のコメント欄。そこでは管理者の「なんかノリが合わねえ」の一言でコメントが削除される恐怖政治が横行していた。
 その時、この地獄の地にあえてコメントを投稿する恐れ知らずの猛者が現われたのだ! いや、あなたの事ですよ?
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