2006.07.06(MOTHER2より)
怪我の功名
何をしていたかと言えば、ボス戦である。前回の猿の洞窟(「猿の惑星」のようなもの)でまわりくどく手に入れたあるアイテムによって、ボスへの道がやっぱりまわりくどく開かれたのだ。ついでにその洞窟ではわりかしレアな回復アイテムや現状かなりレアな攻撃アイテムもひとつずつ手に入ったんだけど、思案の末エスカルゴ運送(*1)に預けました。
*1 エスカルゴ運送
いわゆる普通のRPGにおける「預かり所」の役割をはたす存在。預かり所という一般的に言って事務的なポジションにもかかわらず、このゲームでは使うのが非常に楽しい。みなさんはどうしていますか。レアな回復アイテムや攻撃アイテム。いや、MOTHER2にかぎった話じゃなく。
僕はまず第一に悩みます。これを将来的に使うのかそれとも使わないのか。使うなら話は早い。アイテムとして持っとけばいいのだ。必要になったら使えばいいのだ。そう、ボス戦とか、ダンジョンの途中で不意ににっちもさっちもいかなくなった時とかにさ。
しかし、使わないとしたらどうだ。たとえばボス戦で思ったよりボスが弱いかもしれないじゃないか。ダンジョンの途中でこれといってにっちもさっちもいかなくならないかもしれないじゃないか(ややこしい文章ですね)。
もし使わないですむならそれはそれで幸せなことだ。ことだが、使わないアイテムをずっと後生大事に持ってるのは問題だろう。なぜならアイテム欄には限りがあるからだ。貴重な1マスを使いもしないアイテムのために確保するのはけっこうムダなことだからだ。
つまり問題は使うか使わないのか、そこに尽きる。しかしまた未来を見通す力でもないかぎり、そんなことはわからないのだ。ここに決断が生まれる。どうする!? どうすればベストなのか!?
僕の結論はとてもシンプルだった。うん、なんつうか、……使わないよね、僕の場合。
そうなのだ。持っててもきっと使わないんですよチキショー。だってレアじゃん。貧乏性の僕がこのアイテムを使うはずがないんですよ。これから向かわんとするボス戦のために保持したそれを、ボス戦になってもまだ使うのに躊躇しちゃうんですよどうせ100%。そして時が経ち、いつのまにかさほどレアでもなくなってきた頃にやっと使ってみて、その頃にはさほど威力も感じられないくらい周囲のレベルも上がってるんですよ確実に。それならいっそエスカルゴ運送に預けて「いつの日か使うこともあろう」と満足感だけ得てればいいんですよ僕みたいなゴミクズは。書いてて悲しくなってきたのでこのくらいでやめておきますが。
さて話は戻ってボス戦周辺。やっぱりあのアイテム持ってくるんだったなあと思いながらパーティーのひとりが「きぜつ」し(今までの思案が光の速さでだいなしになる)、しょうがないんでいったんダンジョンを出て病院で回復しついでにセーブし、また舞い戻ってあれこれあってどうやら最後の扉的なところに。
ちなみにこの途中に出てくるうかつそうな敵が凄まじくバカバカしくふざけていて、なんつうかもう大好き。あれっ、て思い、まさか!と思い、やられた!とかも思い、ひでえ!と思い、うわーっ!て思い、えええええっ!?と思った。本当にこのゲームは人を食っている。
で、ボス戦等ひととおりが終わり、えーと具体的なところを可能なかぎりぼかしながら書くと、ボス戦を終えた後のイベントが始まろうとしているところ。ここにいる人物Aもしくは人物B、どっちかに話しかけるとイベントが開始になるであろうというところ。
困ったことになった。どっちから先に話しかけたものだろう。
仮に人物Aに話しかけたとする。話しかけたらイベントが進んだ……となったら、人物Bに先に話しかけときゃよかった!と僕などは思うのだ。
イベントが進んだあとに人物Bに話しかけても、もうイベントに関連したことしか言わないだろう。それなら先に人物Bに話しかけてイベントに関係ないセリフを聞いた上で、今度は人物Aに話しかけイベントを進め、そしてもう1回人物Bに話しかけてイベント関連のセリフを聞く。これこそが理想である。すべてのセリフを取りこぼしなく聞いておきたいのである。なにしろこのゲームはつまらないセリフがとても愉快なのだから。本来聞き流すようなどうでもいいセリフにこそ味があるのだから。
人物Aはここ数日間での最終目標的な人物である。しかし人物Bはいまやこの場の中心である。いやしかし前後の状況から言って、むしろ場の中心から降りたともとれる。となるとやっぱり人物Aがイベント進行役かしらん。いやいやでも人物Bじゃないと話が進まないような……。
と堂々めぐりの末、最終的に僕は考えるのをあきらめて人物Bに話しかけたのだった。
案の定イベントが進行しちゃった。
みなさんはどうしていますか。もちろんMOTHER2にかぎった話じゃなく、こういうイベント直前メッセージに関して。
僕はリセットボタンを押した。そこは断固として押した。核の発射スイッチを押す大統領ばりの強い意志とかそういう感じで押した。ちなみに押したらゲームキューブのフタがパカッと開いた。いつもゲームキューブのリセットボタンとイジェクトボタンを間違えるんだけど、この異常にそっくりな2つのボタンはどうにかならないのか。
たまたま「きぜつ」をはさんでたおかげで、セーブしたところからの復帰は比較的楽だった。文字通りの怪我の功名である。うまいことを言ったつもりになっている。
そして今度こそ人物Aに話しかける。……ん? ききおぼえのあるセリフを喋っているぞ。
そうか。
さっきは 人物Bに話しかける→イベント進行→イベントの最中に人物Aもセリフを言う→イベント終了 という流れだった。おおざっぱに言えば。
しかし人物Aに先に話しかけると、こういうことになるのだ。人物Aのセリフ→人物Bに話しかける→イベント進行→(今度は人物Aのセリフがない)→イベント終了
どっちに先に話しかけても、セリフの取りこぼしがないつくりになっていたのだ。あれっ、て思い、やられた!とかも思った。
いったい何のためにリセットボタンを僕は押したのか。とも思ったが、その途中でたまたま寄ったある場所では、前に来たときと違うセリフが聞けたのだった。たぶんリセットしなかったらずっと気が付かなかったと思う。
……怪我の功名、ということで片付けておきたい。