2004.06.13(家電・エレクトロニクスより)
カシオ "XFER" XF-600
入浴中ってヒマでしかたねえ! あんなの単純作業じゃねえか! いや入るけど!そんなわけで僕は風呂嫌いである。いや入るけど。このヒマな時間をなんとかできないかと色々考えた結果、たどりついた結論それが風呂テレビ。
風呂ビデオ
なぜXFERなのか? 世の中いろいろと防水テレビがある中、このXFERシリーズときたらロースペックモデルの6Vサイズ『XF-600』(すなわちこれ)ですら10万円台というハンパない高価格。ちなみに世間の6Vサイズ風呂テレビはおおむね5万円台で売られてるといえば、このソニーのQUALIAばりの猛烈価格ぶりはご理解いただけるだろう。しかし(僕が)ご安心あれ、QUALIAと違ってこの高価格には意味がある。地味にひどいことを言っている。一般の風呂テレビや携帯テレビが基本的にアンテナでテレビ電波を受信する構造なのに対し、XFERシリーズは無線でビデオ入力画像(と音声)を受信する構造なのだ。
これがどういうことかと言えば、いわゆるビデオ出力端子のあるハードならなんでも受信できるということ。まー普通はビデオですわな。そう、XFERはビデオが平気で再生できる、たぶん唯一のポータブル液晶テレビなのだ!(*1)
これはふだん「いつテレビをつけても面白い番組がやってない。むしろ怒りを感じる番組しかねえ」と思ってる、世間の流れを完全無視した僕のような人間にピッタリの仕様だ。というか普通の風呂テレビを買った日には「いつ風呂に入っても怒りにふるえる」というよくわからないことになっているであろうから、XFER以外の選択肢はありえないとすら言える。
風呂で使うということ・準備編
実際のXFERの受信のメカニズムは、まず適当なビデオ出力を発信機である「チューナー」にぶち込むことから始まる。僕とこで言えばHDDレコーダーの出力端子から例の赤白黄の3本ケーブルをチューナーの入力端子につなぐ。あ、ちなみにこのチューナーにはこれと別にアンテナ端子もついてるんで、普通にテレビ放送を受信することもできます。個人的に使わないだけで。で、チューナーの電源ON。つうか設計思想的にはこれ電源入れっぱなしが正しいと思うんだけど、正直ファンの音がパソコンばりにうるさいので入れっぱなしは無理。手軽さはなくなるが、いちいちON/OFFした方が安眠のためにはいいだろう。
そしてXFER本体も電源ON。だいたい5秒くらいボーっと待ってると、唐突に音と映像が入ってくるのでややビックリする(僕だけが)。
この映像、かなり美麗だ。液晶画面自体のクオリティも悪くない(かなり細かい字幕でも視認できる)し、なによりアンテナ受信じゃないんで「映像が乱れる」ということがないのが素晴らしい。MPEG圧縮で映像を送ってるらしいんだけど、いわゆるネット上の動画みたいな画質の荒れもまったく感じられない。かなり細かい字幕とかも視認できるレベルだ。実際、買っていちばん衝撃を受けたのはこの画質だってくらい。
ただし、そこは液晶の悲しさで画面を斜め方向から見るととたんに暗く見づらくなってしまうのは要注意。入浴しながらでも真正面から見据えられる置き場所というのは、思ってるより少ない。ついでに入浴中は当然ながらメガネ・コンタクトのたぐいも使えないので、意外とベストの置き場を見つけるのに苦労するとは言っておこう。
さて、受信も確認できたところでXFERを持ち運んでみる。距離的にはけっこうチューナーから離れてもそれなりに受信できるようだ。たぶん。このへん経験則でしか話をできないんだけれど、鉄筋の入った壁を3つばかりはさむと受信状態が悪くなって映像がたびたびストップする(メディアプレーヤーで重い動画を再生した時のように)。ぎっしり詰まった本棚とかタンスも壁と似たようなものだ。ただ、少なくともチューナーのある部屋から床1つへだてた風呂場ではほぼ問題なく再生できている。
「ほぼ」というのは、シャワーの使用中に1秒ほど映像が停止するケースがあったからだ。だいたいひとっ風呂に1回程度。水滴のせいなのかそれとも水道管を水が走るのがいけないのか、具体的なところはよくわからないんだけど、とにかくそういうこともあるってことで。
風呂で使うということ・実践編
水といえば、このマシン防水なんだった。これ買った店のディスプレイでは、避難訓練のたき火ばりにジャブジャブ水をかけまくってる写真が展示されていてシビレたんだけど、実際シャンプーの泡がついたんでシャワーの水をかけて流したりとかしてもビクともしない防水力を持っている。ただ、例によって水をかぶった影響で映像の受信が悪くなったり、あと水滴が画面について単純に見づらくなったりとかは当然あるので、深い意味なく水をかけて真夏の恋人気分を堪能するのはすすめられない。すすめるような問題でもないけど。
ちなみに水蒸気で画面が曇ったりということは皆無みたいだ。そういう材質なんだろうか。
実際の使用でちょっと気をつけたいのが音声の大きさの問題だ。風呂場で実際に使って初めて気がついたんだけど、意外にシャワーの音というのはうるさい。これに対抗する意味でXFERの音を大きくすると、風呂の中とはいえけっこうな音量になってしまうので、アパートやマンションで使う人は風呂場の壁の厚さに注意していただきたい。
ところで、風呂場で好きな番組が見られると言ってもどんな番組でもいいというものではない。なぜなら、頭や顔を洗ってれば画面は見えなくなるし、さっきも言ったようにシャワーを流していると音が聞きづらくなるからだ。すなわち「ある程度見逃してても話が通じるようなのんびりペース」「画面を音声が補完し、音声を画面が補完するような、どっちかが見えて(聞こえて)ればなんとかなる構成」の番組が望ましい。
たとえば字幕の洋画なんかは風呂場むきとは言えないし、展開の早いドラマなんかも見逃した瞬間に決定的な事件が起きているかもしれない。お笑い番組も快心のネタを聞き逃す場合もあるのであまり勧められない。テロップがうるさいくらいに出る番組ならアリだと思うけど。そういった意味でバラエティ番組は意外に風呂場むけだと言える。逆に、見逃したところでどうでもいいようなゆるめの番組を見るというのもひとつの手だろう。
最後にひとつ使用レポートとして言っておきたいのが、落としたときの耐久力だ。いや、実際風呂場で泡とか入浴剤とかあるし普通の状況よりすべりやすいんだってば。かくいう僕もこれまで2、3度手元からこぼれ落ちた(愛が)ことがある。
その結果ですが、全然キズひとつついてません! スゲエなXFER! まあ中腰姿勢とかだったから1mもない高さからではあるが、なかなかの耐久力を持っているとは言えるんじゃないだろうか。それなりに重いのに(1.5kg)。
とかそんな感じで毎日使ってるわけですが、はっきり言ってこれはかなりオススメのマシンだ。とにかくかつては「風呂に入るの面倒くせえ! 5秒で着替えからドライヤーまでが終わる風呂とかをドラえもんがくれねえかなー」とか言っていたこの僕が「今週の鉄人28号まだ見てないや。いっちょ風呂でも行くか!」とノリノリで風呂に入るようになる(いや今までも入ってはいたけど)という奇跡のパワーストーンばりの変化をしたというからこいつは本物だ。
リモコン地獄
さて話は変わってこのXFER、ウリのひとつにリモコン機能がある。付属の防水リモコンからXFERに向かって再生ボタンとか押すと、その信号がチューナーに送られさらにチューナーに接続した赤外線発信器(←こう言うとかっこいい)に転送され、信号は赤外線となり発信器の前のビデオに送られる。こうして風呂場からでもXFERを通じてビデオを操作できる! という夢の機能だ。というかこの機能、実にハードディスクビデオレコーダーと相性がいい。この間買ったから言うんだけど。大容量で頭出しが瞬間的にできるハードディスクレコーダーなら、風呂場からビデオのメニューを出して適当に見たい番組さがして、という野放図なやり方もなんのストレスもなく可能だ。そしてなにより番組がCMに入っても即座に飛ばせる。これはアンテナ受信の風呂テレビにはできない芸当だ。こ、これぞ未来だぜ!
と思ったのもつかの間。なんか、このリモコン、僕のRD-XS40に対応してないんですが。
そうなのだ。この付属の防水リモコン、電化店でよく売ってる汎用リモコンと同じ方式で、メーカー番号を入力するとそのメーカーに対応した信号を発信するようになるんだけど、そのリストの中にRDシリーズのマシンが入ってないみたいなのだ。それでいてXFER本体はこの防水リモコン以外からの入力は受け付けないという間違った囲い込み政策。
説明書きに「一部のビデオやDVDなどの外部機器には、操作できない、あるいは特定のボタンが使用できない機種があります」とあるし、このXF-600じたい2002年10月っていう微妙な時期の発売だからしかたないとは思うんだけどさ。このへんワラにもすがる気持ちでユーザーサポートに確認とかもしてみたけど、ファームウェアアップデートで対応の予定とかもないみたいだ。まあ普通そこまでしないか。
と、あきらめかけてたその矢先に最新機種XF-1000発売のしらせが!(2004/5/20発表) こ、これはさすがに時期も時期だし対応してるんじゃねえ? いや、もうこの際いまのXF-600売っちゃってXF-1000買おう! いま買おう! と盛り上がったものの、まあ念のためこれまたカシオのユーザーサポートに対応状況を質問。
「XF-1000と東芝製HDDレコーダー『RD-XS40』とのリモコン動作確認につきましては、残念ながら行っておりません」って、バカ─────────っ! あ、アンタ達最高のマシンを作っておきながら、その利点をなにも理解できてねえ! その確認を行なわずして他になにをするっつう話ですよ。実際ビジネスチャンスを1台分逃してるし。もちろんこんな状況じゃ買えませんよXF-1000。
そんな感じですっかりやさぐれたわけですが、こうなるとむしろ意地でもリモコン操作したくなるのが人情。新型機発売の報が入った直後から対応リモコンのある暮らしを夢想してしまったがために、もう風呂に入る直前にビデオを再生しておいて、なんとか番組が終わるまでに風呂を終わらせるというせせこましい生活に耐えられなくなってしまったのだ。
リモコン天国
で、ふと思いついたのがHDDレコーダーRD-XS40(というかRD-Styleシリーズの大半)には、『ネットdeナビ』という狂った機能がついているということ。ビデオデッキとパソコンを自宅LAN接続して、パソコン上からマウスやキーボードショートカットでビデオを操作するという、まあ実際ここで書いててもあらためて狂った機能だと思う。しかし僕にとってはむしろ求めていた機能。無線で遠隔操作できる家電となるとそうそうないが、パソコン相手なら無線マウスとか無線キーボードとかふつうに売られてるじゃないか。このさいビニールで包んだりなんだりして風呂に持ち込んでやるゼ!……と思って調べてみると、意外に無線キーボードって受信範囲が狭いんですな。これじゃ到底風呂場まで届かねえ! お、終わりだ!(世界が)
だが世界は広い。日本の会社以外に目を向けてみると、そのものズバリ無線発信するリモコン(PC用)というのが売ってたのだ。その中でも日本法人がいちおうあって比較的入手しやすかったのが『Remote Wonder』という商品。速攻で購入!
Remote Wonderの詳しい話は別項で話すとして、風呂場でRD-XS40を使うという目的からすると大成功でした!
風呂場での視聴に必要な機能を全部設定しておけば、問題なく実行可能! さすがにこれだけ距離が離れると受信に失敗する場合もあるけど、「よく入る角度」を探すことでとりあえず解決。チューナーから来た動画データをXFERがデコードするのに0.5秒くらいかかるせいで、リモコンを押してから結果が返ってくるまでも0.5秒くらいタイムラグがあるのが気持ち悪くはあるけどそれぐらいは良し。100円ショップで買ってきたジップロックもどきにリモコン入れたので防水面も、まあそれなりになんとか。
やっぱりインスタントスキップ機能が使えるのでCM抜きして見るのが簡単なのが何より嬉しい。シャワーやシャンプーで見逃したり聞き逃したりしても、すぐさま巻き戻せるのも便利だ。そんなことをしててあっと言う間に番組が終わっても、その場で別の番組に切り替えられるから問題なし。実に快適きわまるぜ! というか、こうして考えると基本機能しか設定できない付属リモコンより多機能ではるかに便利ですな、Remote Wonder。
ただしこれ、僕がネット対応のRDとMacintosh(Windowsではうまくいかない)を持ってたというかなり限定された状況だったからできたことで、あんまり汎用性のない手段ではある。だいいち最初からXFERのリモコンがちゃんと対応してればよかったんだし、これから新しいビデオに買いかえるたびに対応してるかどうかビクビクするのもスマートじゃない。カシオの技術陣には例のリモコンを学習リモコン形式にするよう強く提言する。ていうか学習リモコン形式にしやがれ。このさい1万円くらい高くなってもいいから。というのがマジに偽らざる僕の心境。
とりあえずカシオのページの「お問い合わせフォーム」は未購入の人からの質問も受け付けてるんで、買う前にいちど問い合わせておくと良いと思う。なんだかんだで高い買い物だし、ここで失敗するのはダメージがでかいだろう。
ここさえクリアーになれば物凄くいいマシンなんだけどなー。