2000.06.24(テレビの話より)
夢と現実の狭間で
あれは夢だったのか、それとも現実だったのだろうか。
僕の子供のころの思い出で、今にして考えるとどうしてもうまく説明のつかない不思議な記憶がある。
とかいう具合に書くとまるでこれからロマンスティックな物語が始まりかねないいきおいだが、その記憶とはテレビのクイズ番組を見た記憶でこれっぱかりもロマンの香りがしないのであった。
とにかくその番組というのはこういう具合だった。
スペシャル番組だったと思う。とにかく壮大なのである。まず一般から公募された出場者がいて、彼らがまあクイズ番組でいう回答者の立場になる。男女ペアだったと思う。
そこで出される問題だが、それはなんというか暗号文なのだ。予言詩のような。記憶に残っている文面の最後は「そして私に口づけせよ!」だった。本当はこの前に何行も「〜〜の中心にて〜〜を見つめ私は待つ。」とかそういう雰囲気の言葉があったのだと思う。
暗号文は、世界のどこかに番組スタッフが用意した宝のありかを示している。回答者の二人はスタジオに用意された百科事典だの何だのの資料をあさって、その暗号を解くというスリリングな内容だったはずだ。
ここまでは、まあそんな番組があってもおかしくはないという話なのだが、ここから事態は変な方向に動き始める。回答者はスタジオにいる。そして見つけるべき宝は世界のどこかにある。そこで、その宝を探しにいく人間というのが別にいるのだった。たぶんタレントじゃないかと思うんだけど、その人は回答者の指示にしたがって世界を飛び回るのだ。いや、ちょっと待って、それは企画がダイナミックすぎじゃないのか。
もし回答者が間違った推理をしたらどうするんだ。インドに宝があるはずなのに、「ニューヨークに行ってください」とかの指示がとんだら番組はどうなってしまうんだ。だいいち、ニューヨークに飛んでいる間、回答者はただ何時間もスタジオで待ってるだけなのか。
どうもおかしい。物凄く大胆なヤラセなんだろうか。だいたいあのあいまいでどうとでもとれる暗号文から正しい意味を解釈できるという段階でヤラセっぽいじゃないか。しかし、そこまでダイナミックなヤラセというのは、当時のテレビ業界でもいくらなんでもないんじゃないのか。いや、川口浩の探検隊シリーズがあった時代だから、あるいは……、しかしこれはまがりなりにもクイズ番組だし……。
という具合で話のつじつまが合わず、どうも自分の記憶を信じることができないのだが、しかし夢かなにかにしては細部のディティールを妙に憶えているのである。回答者の「アーチを探せ」という指示を受けたレポーター (?) が英語で「アーチはどこだ!」と叫びながら街を走り抜けるシーンを僕はいまだ克明に憶えている。この男は「アーチ」というものをよく知らなかったらしく、目と鼻の先にあるのに気付いていないのである。そしてアーチの下で見つけた宝はなんと巨大なヘビだった。「私に口づけせよ!」という暗号の指示通りにヘビにキスしなければならなくなる彼。制限時間はせまるが、彼は躊躇する。時間ぎりぎりで成功。回答者コンビには賞金 (賞品?) が支払われる。決してこれは夢などではなかったと思うのだ。
誰か、この番組について知ってる人は教えてくれませんか。マジで。