2002.10.14(本の話より)
小説に関する100の回答
「小説に関する100の質問」
この質問は『鉄の靴』の提供です(自家発電式)。
Q1
今まで読んだ中で、一番泣いた小説は?
『壬生義士伝』(浅田 次郎) 。まーそのなんだ、泣き方にもいろいろあるとは思いますが、これに関してはもうわんわん泣いた。「主人公が死んじゃったから」とかそういう簡単なレベルじゃない、こう、胸に迫るものがよう。
Q2
今まで読んだ中で、一番屑だと思った小説は?
『魔女の刻』(アン・ライス) 。主人公の女性が吸血鬼にエロ誘惑されて恋人 (もう1人の主人公) を裏切るくだりでもかなりいらいらしてましたが、その後、このアマが自分の赤子を殺されてもまだ目が醒めない段階でこの小説を読むのが心底嫌になりました。というか屑だよ、あんた心底の屑だ!
Q3
今まで読んだ中で、一番嫌な気分になった小説は?
『切り裂きジャック・100年の孤独』(島田 荘司) 。話としては普通に面白かったんですけど、レイプシーンの描写が陰惨で嫌な気持ちになりました。
Q4
今まで読んだ中で、一番あきれた小説は?
『水晶のピラミッド』(島田 荘司) 。本当の話、謎が特に解明もされず謎のまま放っておかれるミステリ小説っていうのは意外に多かったりもしますが、実際に読んだのはこれが初めてだった。あきれたなあ。
Q5
今まで読んだ中で、一番頭がくらくらした小説は?
『ワールズ・エンド・ガーデン』(いとうせいこう)。話の内容もたいがいなものではあったんですが、冒頭主人公が薬をキメてバッドトリップに陥る描写読んでたらかなりくらくらと。なんか読んでるときにかけてたCDがハウス系だったのがまずかったのだろうか。
Q6
今まで読んだ中で、一番笑った小説は?
『スターライト☆ぱにっく!』(火浦 功)。ちなみに前2作をとばしていきなりこの本から読み始めたんですけど、それもよかったのかも。ライトノベルの「お笑い」の文法はすでにこの時完成していたんだなあ、って今になって思う。
Q7
今まで読んだ中で、一番続きを読む気がしない小説は?
『創竜伝』(田中 芳樹) 。たしか4巻のあたりまではとても楽しんで読んでいたはずなんだけど。えーと、というかいちおう10巻くらいまで読んでた気がするんですが、すでに6巻あたりからどんな話になっていたのかよく覚えていません。
※なお、この本にかぎりリンク先はあえてCLAMPが表紙を描いてる文庫版ではなくノベルス版にしています。心にかろうじて残っているいい思い出をなんとかして守るために。
Q8
今まで読んだ中で、一番幸せな気持ちになった小説は?
『刑務所のリタ・ヘイワース』 (スティーヴン・キング) 。〔『ゴールデンボーイ』収録 〕 涙を流しながら笑った (笑いすぎでとかじゃなくて) というのは、たぶん今までの人生でこの小説が最初で最後じゃないのかなあ。
Q9
今まで読んだ中で、一番恐怖を感じた小説は?
『デスペレーション』(スティーヴン・キング) 。冒頭の警官にじわじわと追い詰められていくシーン。一過性の怖さといえばそうなんだけど、とにかく慣れない土地をプチ一人旅中とかに読んだりするもんじゃないね、この場面は。(実体験からいうと)
Q10
今まで読んだ中で、一番奇怪さを感じた小説は?
『眩暈』(島田 荘司) 。おおむね御手洗清シリーズは怪奇性が強くなるほどミステリとして破綻するようになっていますが、これはだいたいにおいて幸運な例外だったと思う。とにかく冒頭の「本当にこれが解決するのか?」というわけのわからなさが素敵だ。たとえ一部ものすごい適当に片づけられた部分があるとはしても。
Q11
今まで読んだ中で、一番影響を受けた小説は?
『学術小説 外骨という人がいた!』(赤瀬川 原平) 。文体とか物の見方とか、正直バイブル的存在ですよ。小説と呼ぶにはかなりギリギリというか無理がありますが、小説と作者本人が言い切っているので。
Q12
今まで読んだ中で、一番初読時と再読時のギャップが激しかった小説は?
『ファイアフォックス』(クレイグ・トーマス) 。最初に読んだ時はサスペンス小説の楽しみかたというのをまるでわかってなかったので、なんて役立たずの主人公だ! 早く戦闘機に乗れ! それか死ね! 等とひでえことを思っていらいらしてました。
Q13
今まで読んだ中で、一番憧れた小説は?
「ナルニア国ものがたり」シリーズ (C・S・ルイス) 。なんだかすごい普通な答えになってる気がするけど、そりゃ子供的にはナルニア憧れますよ。
Q14
今まで読んだ中で、一番疲れた小説は?
『パナマの死闘』(セシル・スコット・フォレスター) 。心底面白いんだけど、文字通りの死闘をまる1巻にわたって繰り広げられた日には、読み終わったとき「やっと終わった」と思わざるをえないというものだ。
Q15
今まで読んだ中で、一番結末に納得のいかない小説は?
『ストロング・メディスン』(アーサー・ヘイリー) 。ていうかそれは最初に読んだアーサー・ヘイリーの小説だからだけど、つまりアーサー・ヘイリーの小説ぜんぶ! 小説としてあんなに面白いのに、なぜラストで常に話をあいまいにしたがるのかがどうしても分からないんですが。
Q16
今まで読んだ中で、一番結末が意外だった小説は?
『評決のとき』(ジョン・グリシャム) 。どんでん返しというのとはまた違うんだけど、うわーそうかーと驚かされるっていう、いや、まあ、結末にかかわることなんで詳しく書けないけど。
Q17
今まで読んだ中で、一番面白さの理解できなかった小説は?
『ヴァーチャル・ガール』(エイミー・トムソン) 。いやあちこちで大変おもしろい神ノベルだといわれてるくらいだし多分つまらない小説じゃないはずなんですが、おそらく自分にはこの小説を読む素質がないのだと思います。マジでおもしろさがわかんないんだよなあ。
Q18
今まで読んだ中で、一番続きが気になる小説は?
「ワイルド・カード」シリーズ (ジョージ・R・R・マーティン他) 。最高に楽しみなシリーズだったんだけど、なんつうか打ち切りみたいになっちゃったらしくて、日本では。かといって原書も在庫切れだし、あーあ。
Q19
今まで読んだ中で、一番予想を裏切る面白さだった小説は?
『恐怖の誕生パーティー』(ウィリアム・カッツ) 。どう考えても面白くなさそうなタイトルだけど、これが謎と恐怖とサスペンスに満ちた良作とくる。たしかにタイトル通りの話なんだけど。
Q20
今まで読んだ中で、一番期待を裏切る内容だった小説は?
『九百人のお祖母さん』(R・A・ラファティ) 。いや悪いのは間違いなく「大爆笑必至!」みたいな事を書いていた書評なんですが。笑いとはいってもこの本はそういう種類の笑いじゃねえだろと思います。後で読み返したら、スゲエ面白い短編集でしたよ。
Q21
今まで読んだ中で、一番心に残る言葉が出てきた小説は?
『小説 F-ZERO […そしてスピードの神へ]』(尾崎 克之) 。ゲームのノベライズに何かを期待するのは間違ってるし、この人の他の小説がとりたてて凄いとも思えないんですが、この小説だけは奇跡的に素晴らしかった。最後のスワンの「走れ。走れ。走れ。」のまわりの一連のセリフは忘れられないですよ。
Q22
今まで読んだ中で、一番読むのをやめられなかった小説は?
『眩暈』(島田 荘司) 。あのぶ厚い本を寝る前にちょっと読もうかと思ったのがまずかった。本当に解決されるのかどうか先がどうしても気になって、読み終わるころには朝ですよ。
Q23
今まで読んだ中で、一番青春の思い出と呼ぶのにふさわしい小説は?
『銀河英雄伝説』(田中 芳樹) 。……なんかこれ、青春の思い出というと非常に気持ち悪いものがあるんですが。でもたしかにあの時僕は夢中だったし、実際いま読んでも変わらずに面白いのだった。
Q24
今まで読んだ中で、一番出版された事が喜ばしかった続編は?
『大ハード。(未来放浪ガルディーン外伝2) 』(火浦 功) 。いや、このシリーズが楽しみだとかそういうこと以上に、この作者が生きていて本を書いたっていうことが。そういう思いとともにこの本を手に取った人は多いと思う。
Q25
今まで読んだ中で、一番出てほしくなかった続編は?
『パーフェクト・キル』(A・J・クィネル) 。前作『燃える男』の重要な点を含むので詳しくは書きませんが、冒頭を読んだとき、いくらなんでもこれでは前作がだいなしではないだろうか、と思いました。
Q26
今まで読んだ中で、一番不当に低い評価を受けている小説は?
『マンハッタン物語』(フランク・コンロイ) 。詳しく知ってるわけじゃないが、自分の知るかぎりではどうにも売れてないようだから。
Q27
今まで読んだ中で、一番不当に高い評価を受けている小説は?
『バトル・ロワイアル』(高見 広春) 。すいませんこれ立ち読みで数ページしか読んでないんですが、そこまで売れるような文章じゃない気がしたので。真面目に読んだらたぶん印象も変わってくると思うんだけど、他に思いつかなかったし。
Q28
今まで読んだ中で、一番ハラハラした小説は?
『ミザリー』(スティーヴン・キング) 。あるでしょ、あの定番の「気付かれないうちになんとかしようとして、でも危ない! 気付かれるよ! キャー!」っていう『バック・トゥ・ザ・フューチャー2』の「オー・ララ万引き」。←せめてヒッチコックとか言えないのか
Q29
今まで読んだ中で、一番繰り返し読んだ小説は?
「黒後家蜘蛛の会」シリーズ (アイザック・アシモフ) 。軽めの短編集はどうしてもつい繰り返し読んじゃう気がする。
Q30
今まで読んだ中で、一番「惜しい」小説は?
『トウキョウヘッド (『ファミ通』連載版)』(大塚 ギチ) 。いや本当どうしようもなくひどい小説だったんですが、あの短いスパンでぶつ切りにした構成とかゲーマーを中心に据えた設定とか、もし作者の頭の中の理想通りに書かれていたらとても面白かったんだろうなあって。ひどい事を書いている。
Q31
今まで読んだ中で、一番男性主人公が魅力的な小説は?
『エラリー・クイーンの事件簿』(エラリー・クイーン) 。紳士的で慇懃無礼な衒学趣味の優男というキャラクターがなぜ当時のアメリカ小説界の中に存在しえたのか、いまだに不思議でしかたがない。
※なお、最近の版ではオシャレを気取ったイメージぶちこわしの表紙な上に翻訳もスカスカでつまらなくなってるので、あえてリンクは貼りませんでした。古本屋で古い版を探すことを推奨。
Q32
今まで読んだ中で、一番女性主人公が魅力的な小説は?
『ドロレス・クレイボーン』(スティーヴン・キング) 。ドロレスが歳とってから限定。それにしてもこの設問の答、なかなか思い浮かばなくって苦労しました。女主人公ってつくづく扱い悪いよなあ。
Q33
今まで読んだ中で、一番主人公の恋人 (あるいはそれに近い位置づけの存在) が魅力的な小説は?
『二日酔いのバラード』他「トレース・シリーズ」(ウォーレン・マーフィー) 。チコ・マンジーニ最高ですよ。Q32でもよっぽど『チコの探偵物語』の主人公であると言えなくもないという無理のある理由でチコを推そうかと思いましたよ。頭が良くてひどく自分勝手でそれでいて嫌みがない、無敵のヒロイン像。特にシリーズ後半。
Q34
今まで読んだ中で、一番脇役が魅力的な小説は?
『燃えよ剣』(司馬 遼太郎) 。つうかこの設問は幅が広すぎてしぼりきれねえよ!とわれながら思いましたが、とりあえず司馬版の沖田総司は素晴らしいと思う。あれだけ早い時期に沖田総司のひとつの完成形ができあがっていることは猛烈に凄い。
Q35
今まで読んだ中で、一番嫌な奴が登場した小説は?
『魔女の刻』(アン・ライス) 。くりかえすようですが、あのヒロインはいっそ死んじまえばいいと思った。そしてその後で、あらゆる苦痛のうちになお死にきれずにいて後悔と絶望を感じていればいいと思い直した。ハードボイルド。
Q36
今まで読んだ中で、一番素敵な響きの人名の出てきた小説は?
『ガンスリンガー』他「暗黒の塔」シリーズ (スティーヴン・キング) 。「ローランド・デスチェイン」っていくらファンタジー世界でもそんな名前、無茶だと思う。素晴らしい。
Q37
今まで読んだ中で、一番ひどい響きの人名の出てきた小説は?
『いなかぶり』(島尾 敏雄) 。これ教科書に載ってたんだっけなあ。ふつうの小学生の男の子の名前に「思無邪 (しむや)」はねえだろう、と思いながら読んだんだけど、その妙なところが個人的にはたいそう好きだったりもします。
Q38
今まで読んだ中で、一番魅力的な物体の出てきた小説は?
『グッドラック 戦闘妖精・雪風』(神林 長平) 。「FFR-41 メイヴ〈雪風〉」。美しくて最強の機体で、なによりその性格っつうか、その、わかるでしょ?(無理にもほどがある)
Q39
今まで読んだ中で、一番魅力的な場所の出てきた小説は?
『檸檬』(梶井 基次郎) 。この場所に魅力があるのは単に丸善の手柄だということは重々承知しているんですが。そもそも丸善の描写自体がたいして文章中にないし。それにしても最近の丸善ときたら堕落のきわみだと思うんですが、どうか。
Q40
今まで読んだ中で、一番豊かな小説は?
『マンハッタン物語』(フランク・コンロイ) 。もう主人公が感動する場面ではまったく同じように読者も感動するっていう、それは他の小説が追いつけないレベルで。しかもその感動場面がけっこうに多いっていう。
Q41
今まで読んだ中で、一番美しい小説は?
『イギリス人の患者』(マイケル・オンダーチェ) 。単なる砂漠の描写を読んでるだけで涙が出てきそうになるっていうのは、ただごとではないと思います。地雷解体の描写でも泣きそうになるしね。なんだそれ。
Q42
今まで読んだ中で、一番痛快な小説は?
『ア・ラ・カルト』(ジェフリー・アーチャー) 。〔『十二の意外な結末』収録〕 徹底的なサクセスストーリー。それにしてもキレイに「痛快!」っていう小説って意外に少ないもんだなあ、とこの問の答考えてて思いました。
Q43
今まで読んだ中で、一番ナンセンスな小説は?
『宇宙クリケット大戦争』(ダグラス・アダムズ) 。ここまでいい意味でくだらない発想がいったい頭のどこからわいてくるのだろうか。中でも白眉は今作で初登場した新方式の宇宙船。全編が心底くだらない思いつきだけで構成された、心底すばらしい小説。
Q44
今まで読んだ中で、一番読みにくい小説は?
『指輪物語』(J・R・R・トールキン) 。読んでる最中、何度も自分が何を読んでいるのか分からなくなった。中学1年のころに読んだせいなのかなー。
Q45
今まで読んだ中で、一番内容が薄い小説は?
『アイドル防衛隊ハミングバード』(吉岡 平) 。「今日はもう疲れた! でも本は読みてえ! だから楽に読める中身のない本を!」というコンセプトで買って、まさしく期待通りで満足。いや、皮肉じゃなくて。
Q46
今まで読んだ中で、一番説教臭い小説は?
『はてしない物語』(ミヒャエル・エンデ) 。読んでいるうちに怒られているような気持ちになったものです。特に最後の方。そんなに怒らなくたっていいじゃん、とか。読者を。
Q47
今まで読んだ中で、一番恋愛の描写に優れている小説は?
『ある愛の歴史』(ジェフリー・アーチャー) 。〔『十二本の毒矢』収録〕 ものすごく短い中に、イギリス的な愛が濃縮されて詰まってらっしゃいます。
Q48
今まで読んだ中で、一番友情の描写に優れている小説は?
『壬生義士伝』(浅田 次郎) 。主人公に対して「この男だけは死んではいけない」と大半のキャラクターが思っているっていうのも、珍しいと思った。
Q49
今まで読んだ中で、一番暴力の描写に優れている小説は?
『ビリー・ザ・キッド全仕事』(マイケル・オンダーチェ) 。〔なんでかAmazonでは見あたらなかったのでeS! Books〕 というかまあ現実の暴力はどう見てもこんなに美しくはないでしょうが、だがそこがいい。
Q50
今まで読んだ中で、一番日常の描写に優れている小説は?
『IT』(スティーヴン・キング) 。よくもまあこれほどどうでもいい日常を劇的に短く切り取れるもんだと感心しきりですよ僕とか。
Q51
今まで読んだ中で、一番風景 / 世界観の描写に優れている小説は?
『シンシナティ・キッド』(リチャード・ジェサップ) 。凄すぎ。静けさと熱気に満ちた世界、叙情的な美しい風景。
Q52
今まで読んだ中で、一番食品の描写に優れている小説は?
『黒後家蜘蛛の会』(アイザック・アシモフ) 。うまそうにヘンリーが紹介して、うまそうにホルステッドが食べる。ほぼ毎回。
Q53
今まで読んだ中で、一番渋い小説は?
『高い砦』(デズモンド・バグリイ) 。えーとこれ小説の中の描写によれば主人公は若くていい男らしいんですが、読んでてどうしてもジェームス・ブロンソンに見えてしかたがなかった。
Q54
今まで読んだ中で、一番不条理な小説は?
『鏡のなかの鏡 -迷宮-』(ミヒャエル・エンデ) 。小学生の頃に読んだせいもあると思うし、『はてしない物語』のすぐ後にああいう話なのかなと思って読んで不意打ちをくらったせいもあるんだろうけど。素晴らしく変な小説でした。
Q55
今まで読んだ中で、一番清潔な小説は?
『タランと角の王』(ロイド・アリグザンダー) 他「プリデイン物語」シリーズ。徹底して娯楽モノでそれでいて極めて爽やかな、そういう意味では世にも珍しい傑作。
Q56
今まで読んだ中で、一番不潔な小説は?
『魔女の刻』(アン・ライス) 。理由は前述の通り。不潔だよ、あんた不潔だよ!
Q57
今まで読んだ中で、一番革新的な仕掛けのあった小説は?
『歯と爪』(ビル・S・バリンジャー) 。結末部分が袋とじになっていて、それを破かずに出版社に送り返したら返金されるっていう体裁。「おやめになれますか?」とか書いてあるんだったっけか。わくわくするなあ。
Q58
今まで読んだ中で、一番悲しい小説は?
『トミーノッカーズ』(スティーヴン・キング) 。だめな男がどうやってもやっぱりだめになってしまう悲しさに満ちあふれていて、ラストではやっぱり泣かざるをえない。
Q59
今まで読んだ中で、一番壮大な小説は?
『大聖堂』(ケン・フォレット) 。親子三代とかそういう小説はけっこう多いけど、大聖堂っていうテーマが反則的なほどに壮大。
Q60
今まで読んだ中で、一番奇想に満ちた小説は?
『魍魎の匣』(京極 夏彦) 。あのラストの謎解きは、なんかもういい意味でズルい。奇想だけで長編一本分のネタにするのって反則だ。最高。
Q61
今まで読んだ中で、一番エロティックな小説は?
『女神ソルジーナ』(手塚 一郎) 。〔『ウィザードリィ小説アンソロジー
』収録〕 エロティックっつーかなんつうか。話的にはすごい嫌な小説なんですけどね。
Q62
今まで読んだ中で、一番スピード感があった小説は?
『蒼き狼』(井上 靖) 。ものすごい勢いでモンゴル帝国がひろがっていく。←こうやって書くとひどい話にしか見えない
Q63
今まで読んだ中で、一番軽快な小説は?
『ユニオン・クラブ綺談』(アイザック・アシモフ) 。ここまで軽快だとあと一歩で単なる子供向けの「すいりトリック100問」みたいになっちゃうんだけど、ギリギリでそうなってないっていうのもすごい話だ。
Q64
今まで読んだ中で、一番短かい小説は?
『緑色の悪夢』(フレドリック・ブラウン) だったか何色だったか忘れたけど、とにかくそういうタイトル。〔『悪夢の五日間』収録〕内容はよく憶えてない。短かったことだけを憶えてます。極端に短い短編って、まあ、そんなものだと思う。
Q65
今まで読んだ中で、一番長い小説 (連作・続き物を除く) は?
『IT』(スティーヴン・キング) 。これ4分冊になってるけど、もともとは1冊で出版された本だからこの答で間違ってないはず。それにしてもまったく長さを感じさせない小説だったなあ。
Q66
今まで読んだ中で、一番書いてある意味の分からなかった小説は?
「海の勇士 ボライソー」シリーズ (アレグザンダー・ケント) 。この本すごい迫力のある描写で読んでてたまんなく面白いんだけど、背景の説明が絶望的にわかりづらいんですよ。なんらかの理由で海戦が起きてるのはわかるんだけど、なんでなのかさっぱりなんだよなあ。
Q67
今まで読んだ中で、一番科学的な小説は?
『金の卵を生むがちょう』(アイザック・アシモフ) 。〔『アシモフのミステリ世界』収録〕 これも反則っていうか、面白いからいいんだけど。ある意味根元的なSFマインドのドかたまり的な作品。
Q68
今まで読んだ中で、一番幻想的な小説は?
『オズの魔法使い』シリーズ (ライマン・フランク・ボーム) 。単体だとそれほど幻想的でもないんだけど、シリーズが進んで世界観がまとまってくるにつれて、かなり幻想感が増えると思うんですよ。なんだ幻想感って。
Q69
今まで読んだ中で、一番哲学的な小説は?
『戦闘妖精・雪風』(神林 長平) 。いや、まあ、テーマとしてはいちおう哲学になると思うのでむりやり挙げてみました。哲学的な小説なんか読んだことねえからわかんねえよ!
Q70
今まで読んだ中で、一番重苦しい小説は?
『Uボート』(ロータル・ギュンター・ブーフハイム) 。本当にもう……絶望的というか……リアルにこんな目には遭いたくないっていうか……。面白いんですけどね。 (関係ないけど、「ブーフハイム」で検索しても上巻だけしか引っかからないっていうAmazonのシステムはどうかしてると思う)
Q71
今まで読んだ中で、一番迫力がある小説は?
『シャム双子の謎』(エラリー・クイーン) 。単純に道具立てにやられたという気もしないではないですが、クイーン流の大げさきわまる筆致でこういうことをやられると完敗せざるをえない。
Q72
今まで読んだ中で、一番現実離れした小説は?
『カミロイ人の初等教育』(R・A・ラファティ) 。〔『九百人のお祖母さん』収録〕 むしろラファティという人はいかに現実離れした話を書くかということに必死な人だと思うので、これは褒めているんですよ?
Q73
今まで読んだ中で、一番現実的な小説は?
『シンプル・プラン』(スコット・B・スミス) 。なんかマーフィーの法則とかで「すべての計画は、計画外のトラブルによって失敗する」とかありそうですね。
Q74
今まで読んだ中で、一番のんびりとしていた小説は?
『馬と少年』(C・S・ルイス) 。それほどのんびりムードの話でもなかったはずなんだけど、なぜかこういう印象が。たぶん馬と少年のかけあいがのんびりしていたんだと思う。
Q75
今まで読んだ中で、一番文章のなっていない小説は?
『札幌着23時25分』(西村 京太郎) 。〔←確実に違うけど、とにかく西村京太郎の何か。憶えてない〕 もう「、」の使い方がうざったくてうざったくて。もうだいぶ前にこれ一冊だけ読んで以後二度と西村京太郎は読まないと決めたんだけど、実はそんなひどいものでもなかったのかもなあ、とは少し思います。なにしろ昔のことなので。
Q76
今まで読んだ中で、一番良くできている (小説が原作の) 漫画は?
『天切り松 闇がたり』(幸野 武至) 。〔原作「天切り松 闇がたり」シリーズ (浅田 次郎)〕 絵はまったく垢抜けないんだけど、これほど原作の良さを殺さずに漫画として正しい解釈を加えた作品を他に知らない。ところで第一巻だけがどうしても手に入らないんですが。
Q77
今まで読んだ中で、一番ひどい (小説が原作の) 漫画は?
『エラリー・クイーンの冒険』(JET) 。〔原作『エラリー・クイーンの冒険』(エラリー・クイーン) 〕 いや……なんつうか、ひどいっていう事じゃなくって……というか実際の話あのエラリー・クイーンの解釈は一般的に言って正しいの?
Q78
今まで読んだ中で、一番漫画版を読んでみたい小説は?
『エラリー・クイーンの冒険』(エラリー・クイーン) 。いや、つまり、JET版じゃないやつでっていう、悪いけれど、なあ?
Q79
今まで観た中で、一番素晴らしい (小説が原作の) 映像作品は?
『ショーシャンクの空に』(フランク・ダラボン監督) 。〔原作『刑務所のリタ・ヘイワース』(スティーヴン・キング) ・『ゴールデンボーイ』収録〕 映画化と聞いたときに「こうであってほしい」と想像したら本当にその通りの映画だったので、これはすごいと思いました。
Q80
今まで観た中で、一番ひどい (小説が原作の) 映像作品は?
『女は死んでいない』(落合 正幸監督) 。〔『世にも奇妙な物語 ビデオの特別編(2)』収録〕〔原作『0310-345の謎』(渡辺 浩弐)・『マザー・ハッカー』収録〕 確かに原作のままでは怪奇ストーリーにならないのはよく分かるけど、だからって最後の30秒でとってつけたようにオカルト要素を付け足して話の意味がまったく通らないようにするっていうのは、脳などがどうかしてるとしか思えません。
Q81
今まで読んだ中で、一番映像化作品、あるいはゲーム / 漫画版を観てみたい小説は?
『レギュレイターズ』(リチャード・バックマン 実はスティーヴン・キング) 。映画で。狭い空間で起きた事件を時間ごとに切り取った構成なんで、映像で観るとちょっと面白そう。イメージとしては映画『パルプ・フィクション』とか『メメント』とか (へんな組み合わせ)。
Q82
今まで読んだ中で、一番素晴らしいノベライズは?
『隣り合わせの灰と青春』(ベニー松山) 。〔原作『ウィザードリィ』(ロバート・ウッドヘッド) 〕 原作の矛盾点を正しく解釈しなおした上で、その解釈が本筋に密接に関わっているっていうギミックはすげえなあと思う。
Q83
今まで読んだ中で、一番ひどいノベライズは?
『ロボコップ』(エド・ナーハ) 。〔原作『ロボコップ』(ポール・バーホーベン監督) 〕 えーと、「ロボ刑事 (フリガナでコップ)」という表記は、その、ありなの? あと、最後に叙情的なエピローグを挿入して原作のクールな持ち味を殺したのも正直納得できなかったんですが。
Q84
今まで観た中で、一番ノベライズを読んでみたい映像作品、あるいはゲーム / 漫画等は?
『CRAZY TAXY』(ヒットメーカー製作) 。想像の余地が多いわりに、世界観は猛烈に完成されたゲームなんで、ノベライズになっても面白そうな気がする。
Q85
今まで読んだ中で、一番素晴らしいタイトルの小説は?
『不屈の蛙』(フィリップ・K・ディック) 。〔『模造記憶』収録〕 簡潔で内容をずばりと表現しているにもかかわらず、読んでみないとどんな話なんだかさっぱり想像がつかない。
Q86
今まで読んだ中で、一番ひどいタイトルの小説は?
『燃える男』(A・J・クィネル) 。どうみてもこのタイトルだとガッツマンの話以外考えられないでしょうが! 孤独な復讐者の話にこのタイトルはどうなのよ! ちなみに原題は『Man on Fire』。燃える男……Man on Fire……一瞬だまされそうになりましたが、やっぱりおかしいと思います。
Q87
今まで読んだ中で、一番後書き / 解説が素晴らしい小説は?
『黒後家蜘蛛の会』シリーズ (アイザック・アシモフ) 。なかばあとがきを読むために本編を読んでいたような気さえする。
Q88
今まで読んだ中で、一番後書き / 解説が蛇足だった小説は?
『アザリン16歳』(吉岡 平) 。だったっけ、とにかく「宇宙一の無責任男」シリーズのどれか。素晴らしいわけでもなかった中身を、わざとらしい解説がさらに台無しにしていた。
Q89
今まで読んだ中で、一番表紙の素晴らしい小説は?
『暗闇坂の人喰いの木』(島田 荘司) のハードカバー版。不気味で謎めいていて、その一方で整然とした美しさがある。当時のあのシリーズはどれも良い装丁でしたね。
Q90
今まで読んだ中で、一番表紙のひどい小説は?
『エラリー・クイーンの事件簿』(エラリー・クイーン) の最近の版。前にも書いたけど、とにかくあのなんだか都会的オシャレ風なあれをなんとかしてください。
Q91
今まで読んだ中で、一番作者の名前/ペンネームの響きが素晴らしい小説は?
『イギリス人の患者』(マイケル・オンダーチェ) 。いい響きの名前だよなあ。
Q92
今まで読んだ中で、一番作者の名前/ペンネームの響きがひどい小説は?
『風よ。龍に届いているか』(ベニー 松山) 。どう見てもお笑い系の名前だと思うんですが。小説書くときは別名義にするとか、なにかあったんじゃないだろうか。そういうものでもないのか。あと関係ないけど二葉亭四迷とか江戸川乱歩とかの語呂合わせ系ペンネームも実際どうかとは思います。
Q93
今まで読んだ中で、一番挿絵の素晴らしい小説は?
『鏡の国のアリス』(ルイス・キャロル) 。ジョン・テニエル版の。
Q94
今まで読んだ中で、一番挿絵のひどい小説は?
『無責任元帥タイラー』(吉岡 平) だったかどうか、とにかく「宇宙一の無責任男」シリーズのどれか。「大混乱になったパーティー会場で、混乱を避けて入ったテーブルの下で男女が顔を付き合わせる」っていう場面に「テーブルの下にいる男とテーブルについた女が会話する」挿絵を描くっていうのもたいがいだし、それをスルーで通した編集者も編集者だと思います。
Q95
今まで読んだ中で、一番翻訳の素晴らしい小説は?
『アメリカ銃の謎』(エラリー・クイーン) 井上勇 訳。地の文も会話文も翻訳ならではっつう絶妙にもったいぶった口調で、ああ僕はいま海外小説を読んでいるという気分に浸れたものですが、これも最近の版ではたぶんろくでもない改稿されてるのかなー。あー。
Q96
今まで読んだ中で、一番翻訳のひどい小説は?
『高度41,000フィート 燃料ゼロ!』(ウィリアム・ホッファー / マリリン・モナ・ホッファー) 松田銑 訳。小説としてはおもしろく読めるんですけど、なんかひっかかるというか、「エッ?」っていうのはどうだろう。読んだ人にしかわからない書き方ですが。
Q97
今まで読んだ中で、一番値の張った小説は?
『銀河ヒッチハイク・ガイド』シリーズ (ダグラス・アダムズ)。絶版だったやつをYahoo!オークションで結局、計4000円くらいで買ったんじゃなかったろうか。単価としては『はてしない物語』のハードカバー版あたりが一番高いのかも。高いだけはあっていい装丁の本でしたな。
Q98
今まで読んだ中で、一番ひどい誤記 (誤植) のあった小説は?
『反逆の孤狼』(遠藤 明範) 。主人公の名前を別の巻の主人公の名前と間違えて書くっていうのは、前代未聞だと思う。入り組んだ話なので、ある意味しかたない部分もあるんですが。
Q99
今まで読んだ中で、一番最近に読んだ小説は?
『犯罪カレンダー』(エラリー・クイーン) 。またクイーンか。
Q100
今まで読んでいない中で、次に読もうと思っている小説は?
『エンデュアランス号漂流』(アルフレッド・ランシング) 。ああ悲惨そうな話だなあ。楽しみだ。