2013.01.29(マンガ・アニメの話より)
2012年のマンガを振り返ってみたれやーッ!!(男らしい)
チャンピオン読者が選ぶ! このマンガが面白い! 2013……でしたっけ?(考えてみたら正式タイトルを知らず)そういうイベントがこの世界にはあるのです。スペインの牛追い祭りがこの世界にあるのと同様に。
僕もひとつの週刊少年チャンピオン愛読者だ。やるしかない!(やるっきゃ騎士くらい)
でまあ週チャン・別チャンを除く「チャンピオン以外部門」BEST3からはじめてみよう! あ、基本的に人にオススメするという体裁で書いてます。みんなも読んじゃえばいいじゃん。
①チャンピオン以外部門
対象:2012年に単行本が刊行された別チャン・週チャン連載以外のマンガ作品から上位3位まで
1位『極黒のブリュンヒルデ』
ざっくりジャンル分けすれば「能力バトルもの」ですが、異彩を放つのは「主人公に特殊能力がない」ところ。秀才ではあるんですが、基本ひとタッチで死者が出るような能力バトルにはあまりに一般人。その彼が司令塔として味方の魔法少女の能力をうまく使って、敵を策に見事にハメるのが実に痛快。
ことに面白いのが主人公が「読者より先回りして言い切っちゃう」ギミック。これすっごく伝わりづらいんですが、知略戦系のマンガでしばしば「わかっていないように見せかけて、終わってみたら全部演技でわかってた」という手法あるでしょ。その演技部分をすっとばすどころか、自分がわかってるからそれでいい前提でいきなり結論だけしゃべるんですよこの人。終わってみれば「あー!」とわかる、そのスピード感がヤバい。
またこの主人公、こんな具合で知性派でけっこう身も蓋もないことズバズバ言うこともありますが基本たいへんよくできた子で、もとを正せば縁もゆかりもない魔法少女たちを命がけで救おうとしたり、そんなでかい話じゃなくても変に悪ぶったりせず素直な気配りができるえらい人。あとかなり美少年。読んでて気持ちのいいマンガですな。
作者の過去作は『エルフェンリート』『ノノノノ』と、いわゆる「よく引用される部分」ではどうかした超展開や黒展開で有名ですが、案外それはショッキングなコマを抜き出しただけじゃないかなー。実はきちんと話の流れで見ると非常に健全で、がんばりは報われ周囲はいい連中でそれなりにいい目にあう一方悪い奴は何も手に入れられずひどい目にあう、しごくまっとうな娯楽作家だったりするんですよね。あと女の子がヘンにかわいいよ。ヘンではあります(そこは譲りがたかった)。
本筋から脇道まで色々謎があったり込み入った事情があったりして1話単位で読むとピンときづらいかもしれませんが、単行本で通して1巻読むと非常にわかりやすいエンターテイメント。まだ3巻と読み始めやすい巻数なのでとりあえず1巻目だけ読んでみては。ヤングジャンプコミックスなのでチャンピオンコミックスと違ってどこの本屋にもけっこう置いてあるよ!
2位『超級!機動武闘伝Gガンダム 新宿・東方不敗! [STAGE2]』
角川書店(角川グループパブリッシング) (2011-12-22)
『Gガンダム』! それは数あるガンダム作品の中でも見た人全員がこんなのガンダムじゃねえ、いや面白いけど、と思うことで有名な巨大ロボットによる格闘ガチバトルアニメでした。殴る! つかむ! なんやようわからんエネルギーがはじける! こんなのガンダムじゃねえ!
そんなアニメをかの大熱血漫画家 島本和彦がマンガ化するのだからそれはもう殴るわつかむわはじけるわがいっそう汗臭い大ごとになっております。宮北和明によるMF(ロボ)絵も重量感と鉄くささたっぷり、時に拳で語る男の世界、時にがっくり脱力する頭の悪さの島本節が月産100ページ超の過激な仕事量でサクレツする!
……のが、マンガ『超級!機動武闘伝Gガンダム』のあらすじ(すじでもなんでもねえ)。で、ここからが第2位に推す理由なのですが、この『新宿・東方不敗!』編(タイトル変更による巻数リセットがかかるのでちょっとややこしいのですが、『新宿・東方不敗!』第1巻は実質的な『超級!機動武闘伝Gガンダム』第8巻です)になってからがとんでもない。
1対1のガンダムファイトを描いていた話が突然、謎の敵部隊との籠城戦に切り替わってわけのわからないまま(本当にわからない)しかし熱気と勢いだけは凄いのでなんか読み進まってしまう第1巻。そこから驚きの急展開が始まるのですが、あの作者をもってしてもここまで、という全てにおいて大・過剰!な筆致が続くのです。
烈しい、烈しすぎる戦い! 死を前にしてなおすずやかな覚悟! 命のすべてをかけた心意気! 今までの作者であればどこか「……というバカをやってるというギャグです」的なうーん言い方は悪いけど逃げ道?がどこかに、どこかに用意されてたんですが、原作にそんな逃げ道がないからか、あるいは作者のスパークがいま極限に達したか、大マジでこの熱血を描ききってしまう! しかもやりきったと思ったその次の回ではさらに上をいく熱気が!
本当に読んでて物理的に汗が流れる凄まじい暴走。もうこんなの暴走ですわ。話のところどころではおなじみ脱力ギャグも混じるんですが、それでも熱気が失われることなく同時にギャグ自体にも笑っちゃえる不思議。
『新宿・東方不敗!』から読み始めても大丈夫(わけがわからないのは最初から読み続けていてもいっしょだ!)なので、このマンガにおける迫力と熱気の極点、1〜4巻だけでも読んでみてはいかがでしょう。ここ以外のパートもちゃんと面白いけど!
3位『フダンシフル!』
スクウェア・エニックス (2011-05-25)
なんていうかオススメがすごく難しいマンガ。この作者のマンガは独特の「文法」とでも言うべきものがあって、ふつうのマンガを読む目線で読むと「え? 今のなに?」「この人はなにを考えているの?」「これどういう意味?」「話の流れおかしくない?」みたいな疑問でいっぱいになりかねない……それはあくまで文法の問題で、きちんと脳が正しく翻訳すれば楽しく読めるんですが、あいにくワンアンドオンリーな作家なので文法を学ぶにもケーススタディで憶えるしかないというのが悩ましいところ。
個人的には同時進行で描かれた『学徒のベクトル』(全1巻)で作者のリズムをつかみつつ、「これヘンだけどなんか面白いわ」と思ったら『フダンシズム』に進むのが初心者にはおすすめのルートですが、たいがい気の長い話だなそれ!
まして『フダンシズム』は最初のうちオタク文化と腐女子心をストーリー仕立てで学ぶ学習マンガ(なんだそれ)の性質が強く、これはこれで面白いとはいえキャラが動き出しストーリーが大きくうねり出す4巻あたりからが真骨頂という、ええい本当におすすめの難しいマンガだなもう!
しかしそれでもこのマンガは素晴らしくキラキラと輝く青春を、誰よりも優しい視線で描いた傑作なのです!
好きになった女の子と接点を持ったのがよりによって(とある事情でしかたなく)女装していた時、というタイミングの悪さが生んだ男と女(装)の二重生活。あの娘に少しでも近づきたいとオタク道に踏み込むも、オタクの道は生真面目すぎる素人には疑問まみれというカルチャーギャップ・コメディ。もともと人付き合いの苦手だった主人公が、女装でもう一つの人格を得ることで違った角度から人と知り合い、仲間とも言える友人を作っていく青春譚。二重生活のボロを必死で隠すスラップスティックな軽いサスペンス。
登場人物はほぼ全員オタクで、おおむね全員間違ってる(本当に全員ろくでもなく間違ってる)んだけど、全員好きなもののために一生懸命でその瞬間瞬間を精一杯楽しんでいることもはっきりと肯定的に描かれているバランスも絶妙。オタク文化に無知な主人公が(この人たちはだめなのでは?)という疑問をもちつつ、好きな子のためというちょっと不純な動機でオタク活動を続けていくうちにその「価値」を自然に理解し、仲間と、好きな子と共有できるようになる。その様はとても美しく、そのいつか終わってしまうだろう日々が切なくも爽やかであるのです。
『フダンシズム』全7巻と『フダンシフル!』全3巻で計10巻。初期は絵に独特のクセがあるのと、その上1コマ1コマの情報量が多いので急ぎ足で読むのはまったくおすすめしないし、もうホント難しいんですがあえて、ぜひ読んでほしいと言える作品。
つけたり
難しー! 3つに絞るってすげー難し−!というわけですげー惜しいところで3つに入りきらなかったのをダイジェストでお送りします。
まずエッジの効いたなんだかカオスな月刊誌「チャンピオンRED」(読んでない人に姉妹誌「チャンピオンREDいちご」とごっちゃにされることで有名)から3作。『真マジンガーZERO』は前回も書きましたが、オタクな原作元ネタ大好き視点と現代のマンガ演出表現の技巧、そしてどっちに注目せずともドカンとくる巨大ロボ魂、苦難を乗り越える男の戦い、英雄そして同士としてのスーパーロボットを描ききった、リメイクの域を超える傑作。
秋田書店 (2012-09-20)
秋田書店 (2012-08-20)
スクウェア・エニックス (2012-02-25)
集英社 (2012-12-04)
小学館 (2012-06-18)
続いては2012年に新創刊された週チャンのフレッシュ姉妹誌、「別冊少年チャンピオン」からBEST3!
②別冊少年チャンピオン部門
対象:2012年創刊号〜2013年1月号までに別冊少年チャンピオン本誌に掲載されたマンガ作品から上位3位まで
第1位『サンセットローズ』
秋田書店 (2013-01-08)
『ココ』のことはいったん忘れてこのマンガ、何しろ男がカッコいい。主人公チェリー・ブラッサムが血気盛んなだけの若造と見せかけて、その実腕が立つ! 心が強い! やるべき時にやるべき事をやってくれる! まさに英雄の資質アリの大器。
月刊誌連載ということで1話あたりのページ数が多いおかげもあってか、このヒロイックさをきっちり時間をかけつつ1話完結で魅せる尺のとり方も職人的で、「完成度の高さパネエ」というのがこのマンガのいちばん適切な形容でしょうか。思えば『ココ』以降も作者にはいろんな連載があり、中には正直なんであんなことになったのかわかんなかったものもあり、打ち切りの憂き目にあった作品もけっこうあり、でもまあ傑作ももちろんあるし一度した失敗の二の轍はふまず常に現役を貫いている、そんな中で培われた漫画力がいま『サンセットローズ』という形で現われているんじゃないでしょうか。現在1巻。
第2位『みつどもえ』
月刊誌に移行して2本立て体制になったのが意外に重要というか、読者として読むリズムが変わったのがいちばん大きな変化でしょうか。個人的には週刊時代にはなかった満腹感があり、本の柱のひとつとして支えてる感があって大いにアリ。
2本立ての満腹感ってもカラー扉抜き本文16ページではありますが、このマンガの場合1ページに何種類も笑いがギッチギチに詰まっているのでボリュームは十分。キャラの立った群像劇として話の主軸の横で1コマストーリーが展開してたり、キャラ同士の関係性が生む展開のドミノ倒しがラストで1コマ目に戻ってきたりする実によく練られた脚本。アニメの番宣だけ見て「よくわからないが日常系萌えぷに系かしら」と思ってる人にこそ読んでほしい、そして日常系という言葉が似合わないにもほどのあるテンションで巻き起こるあってはならない事件の数々に衝撃を受けてほしい。でもまあ移籍前の約12巻分たまったキャラ相関図の蓄積あっての今でもあるので、新創刊誌の柱として新規読者の目に実際のとこどう映るのか、ちょっと心配でもありつつ興味のひかれるところですよな。
第3位『ブラック・ジャック創作㊙話 〜手塚治虫の仕事場から〜』
秋田書店 (2013-01-08)
「神様ってこんなに一緒に仕事したくない存在だったの……」と思わされてしまう「漫画の神様」手塚治虫の悪夢的ワーカホリックとわがままぶりというか、もう神様でもなんでもなくない?という「偉人伝」ではありえない身も蓋もないエピソードの数々。
これ仕事が神のごとくできてなかったらただのダメ人間だ! あっ、できてるのか! そして人間的になんかいい人。大げさな美談はないけど、というか悪気のないままヒドいことしたりもしてるけど、それでもやっぱいい人だったんだろうな、どんなキツい職場でもこの人の笑顔があるとちょっとがんばれるのかもな、と思わせる感じ……あっ、それってヤクザの手口やないか!
……うん、まあそういういい話困った話とりまぜて、情熱の筆致で最終的にやっぱすげえ! 手塚先生すげえよ! としびれるように描いちゃうあたりが脚本・作画ペアの見事な技巧。本当にこの人の絵で描かれる「手塚治虫のくったくのない笑顔」ずるいと思います。
かつては短編シリーズを急に連載化してネタ切れしないの? という心配もありましたが、タイトルの「ブラック・ジャック創作秘話」から脱線して秋田書店すらかかわりのない実録・手塚治虫物語へと展開してきてるのでその点も心配無用。瓢箪からコマ的ですが、別冊チャンピオンはいい連載を持ったよね。現在2巻。
つけたり
って、並べてみたら続編・移籍・連載版とフレッシュさの足りないラインナップになってしまった! まずい、別冊チャンピオンの魅力にいまいちふれてない!別チャン、この他に『バキ外伝 創面』『バキどもえ』『クローズZEROII』『聖闘士星矢 THE LOST CANVAS 冥王神話外伝』『別冊 木曜日のフルット』と週チャン好評作の外伝・続編がやけに多く、まあ別冊誌というのはそういうものではあるのでしょうが、しかしここでしか読めない連載もかなりの充実度。
魔法少女ものの極北と話題の『魔法少女・オブ・ジ・エンド』。ひとことで言えば魔法少女・ミーツ・ゾンビという飛び道具ですが、第1話の衝撃「まじかるー」な異形と閉塞感には心ふるわされたもの。
秋田書店 (2013-01-08)
タイトルからは何のマンガかよくわからない『ハダカノタイヨウ』は実は漫研もの。漫画描いてるとか友達に噂とかされると恥ずかしいし……というオタクならずともなんかわかる気恥ずかしさを持った主人公が、完全プロ志向のクラスメート(つよい眼鏡っ娘)に引きずられてマンガに踏み込んでいく物語。自分に厳しい上昇志向で一直線にプロを目指す姉崎さん(つよい眼鏡っ娘)の頼もしさが主軸ですが、ノンプロ志向や、立派なアティテュードはないけどマンガ好きな気持ちに嘘はない主人公、様々なまんが道に平等に光が当たっているのもいいですね。
秋田書店 (2013-01-08)
『サクラサクラ』は別ワクで書きましたが『フダンシフル!』作者もりしげ先生の新作として見逃せない。少子化が進みすぎた近未来、残り数名となった世代の少年少女3人のディストピアを描くこれまたクセの強い作品。この人そんなんばっかりか! まあ、そうだよね! 背景には不穏な大人の理論も見え隠れするのですが、その中で疾走する思春期が強靱で面白く、先の気になる作品ですな。
バカといえば『しこたま』そして『サイケデリック寿』! 『しこたま』は甲子園に挑む女子高生という正しいテーマを、むだなお色気と間違ったキャスティング、完全におかしい理論が台なしにする! 主人公はすぐ脱ぐ(養成ギプス的なものを、しかし結局服とともに脱ぐ)ピッチャー、女房役は女相撲出身のキャッチャーだ! そして『サイケデリック寿』は週チャン本誌で『金縛っておくれよベイベー』『キザクラショウ』等の短編連作でおなじみ西森茂政先生によるナンセンスショートギャグ。説明することを左脳が拒否するVERYハードモードなナンセンスっぷりはますます軒昂で、もう読んで一緒に左脳のはたらきを停止させるしかない!
2012年の週チャンからBEST5、「週刊少年チャンピオン部門」! はっきり言うけどこれ以外のどれを読んでも面白いぞ!(企画意図が否定されかねない)
③週刊少年チャンピオン部門
対象:2012年に単行本が刊行された「週刊少年チャンピオン連載」のマンガ作品 及び、週刊少年チャンピオン本誌2012年NO.1〜NO.53に掲載された読み切り・短期連載を含む全作品から上位5位まで
1位『バーサスアース』
秋田書店 (2012-12-07)
僕はこのマンガをことあるごとに「中二の見た夢」「厨二魂を刺激するマンガ」「とことん中二ソウルに響く」など形容していてなんか無自覚にネガティブキャンペーンを張ってるのではないかと反省しますが、それほどこの作品は少年心を熱く燃え上がらせるのです。
地球がいま、人間達に牙をむく。というテーマは実はどうでもよくて、その牙のむき方が地中から発生した「
(※ここからしばらく読みとばして大丈夫です)
オペレーターの指示とそれを復唱しながらの戦い! 主人公は一般人の高校生だったが、偶然とやむを得ない事情と奮い起こした勇気によって貴重かつ未知数の戦力となる!
人にはやらねばならない時と、燃えずにおれない中二設定があるのだ。決して男の中の男とはいえない主人公がいいところで覚悟を決め、頼りになる周囲がそれを助ける筋立ても絶妙。レオさんことおっぱいこと作品世界一目つきの鋭い女性戦闘員「玲央」の周囲の男性を次々とヒロイン化させる姐さんっぷりおよび普段時のポンコツぶりも注目せざるをえない。あと原作者公認かわいいこと一般人ヒロイン「カナ」があんまり健気でかわいく描かれているのでいつ殺されて主人公が精神的に成長するきっかけになるのか心配でしかたないです。現在1巻。
2位『囚人リク』
一時期、囚人間のシマの取り合い、トップ争いが続いて「おもしろくはあるけど、これは初期の脱獄ストーリーからの路線変更なのでは?」と疑問を感じる時期もありましたが、それまでで得た仲間とツテで本格的に脱獄を計画し始めてからが特にアツい。
看守と警備の隙をつく頭脳戦ととっさの機転、仲間をどこまで信じて命を預けられるかの壁、計画通りに進まないハプニングに襲いかかる絶体絶命の危機! 決してバトってるわけではありませんが「計画バレ=おわり」の監獄島ではこれこそが命をかけたバトル。そして努力と友情と勝利がある、意外にまっとうな少年マンガ性。華やかさや派手さには欠ける地味めで男臭い設定ですが、少年マンガが問題なく読めるなら(要するにひろくマンガ好きなら)読んでいいのでは? 現在9巻。
3位『ハンザスカイ』
で、ハンザスカイ。負け知らずの不良少年が空手部の「クソ女」に手も足も出ず負けてしまったことから始まる恋、そして空手道。主人公「半座」は直情で裏表のない好男子ではありますが、仲間も友達も礼節も知らなかった無頼漢。今まで出会うことのなかったそれらに触れて、人間的に成長していく──というよりも、半座の目に映る世界が少しずつ拓けて輝きを増していく様子が彼自身の目線から描かれていて、とても爽やかで気持ちいいのですね。
サブキャラクターたちも魅力的で、「団体戦の主役以外」も読み応え十分。どこかで曲がってしまったりうまくいかなかったりねじれてしまったりしたものが空手を通して消化され昇華されていくところも押しつけがましくなく、素直にキャラ全員を応援できるように描かれてます。
キレイな終わり方には間違いないのでオススメしやすい全13巻。
4位『さくらDISCORD』
秋田書店 (2012-01-06)
この作品でみごとに消化されきったテーマ、それは友情、恋、すなわち青春! いまどき? そう、いまどき誰もが避けたがる剛速球ストレートをブン投げてきたのです、このマンガは! しかもチャンピオンなのに! いやむしろチャンピオンだからできたド直球の蛮勇なのかもしれません。
作者は何を描いてもドラマチックになるという不可思議な能力をもつ俊英、増田英二。要は球技大会のメンバー集めじゃろ? みたいな話(本当)がまるで世界の存亡をかけた戦いの序章かのように描かれる(本当)マジックが炸裂しています。しかし考えてみたら青春時代とは、本人たちにとって世界で一番大事なことは目の前のことだったりするもの。これがいちばん正しい表現だとは本気で思います。
挫折、仲違い、家庭の事情、諦めきれない目標、告白、全部主人公たちにとっては最重要事項であり、全身全霊をこめてブチ当たるのです。こうして文字に書けば過剰でひと昔前のさすがにちょっとフワフワしすぎな青春マンガがイメージされるかもしれませんが、そこは今風。いわゆるバトル物的な「熱い」ドラマチックな展開と演出で、熱気にあてられて気恥ずかしさの吹っ飛ぶ痛快さで迎えてくれます。
今週から新連載が始まるのも楽しみな作家の前作、揃えやすい全5巻。なぜかAmazonで3巻だけは最初の数ページが読めるのでちょっと見てみるのもいいのでは。
5位『ハーベストマーチ』
学園怪奇妖怪討伐アクション『ケルベロス』がやりきったといえばやりきった、打ち切りといえば打ち切りもいいとこな終わり方をしてしまったのがいまだ哀しい今日この頃ですが、その作者の新作ファンタジーとあれば注目せずにはいられない。えっと……あ、これ気弱な少年がある日「天使」に世界の憎しみを背負わされて、異形の力を持つものの自分の世界を守るために戦うという、非常にまっとうかつダークなプロットの話ではあるんですけど。
読者の予想をはるかに飛び越えた「お前は天才か!」と言わずにおれない新しすぎる表現(テテテテテ)、しかしたしかに正解、予想される正解例とまったく違うとこにあるけど正解としか言いようのない作者が好きにやった表現がここにはある。さっきも書いた諸悪の根源である「天使」がほのぼのとハートマークをぷわぷわ出してナレーションしてたり、普通はナシな表現だけどそれをやっちゃうしそれがアリになるのだからおそろしいぜ。
と、ここまでまるきり上級者向けのような書き方をしておいてなんですが、容赦なくサブキャラが凄惨に死んじゃい、人の身勝手さが別の誰かを傷つける残酷さ、その一方残酷な世界の中で時に小さく時にたしかに保ち続けられる健全さがこのマンガにはあって、残酷さにふれるだけでもうムリっていうことさえなければ誰もが読んでいい内容だと思います。現在単行本は第1巻が3月発売予定。
ラスト! 2012年の週チャンのキャラからBEST3を決めろ! 「チャンピオンキャラクター部門」!
④チャンピオンキャラクター部門
対象:2012年に単行本が刊行された「週刊少年チャンピオン連載」のマンガ作品 及び、週刊少年チャンピオン本誌2012年NO.1〜NO.53に掲載された読み切り・短期連載を含む全作品
1位『さくらDISCORD』より、住吉さくら
秋田書店 (2012-03-08)
ここからはややネタバレ気味になりますが、寡黙無愛想で人をゴミ虫のようにさげすんだ目で見下ろすことに定評のあった住吉さんですが、その実まじめないい子でした(かなりはしょった)。
バトル漫画でたとえると(『さくらDISCORD』は青春漫画ですが、バトルでたとえやすいマンガなのでこれはしかたないことなのです)一度敗北し自分を取り戻した住吉が後に主人公パーティーの危機に立ち上がり共に戦うことを誓う、あのシーンの凛々しさときたらどうでしょう。その後「あ、この子、他人と関わろうとしないから見えなかっただけで人と多く関わるとかなりのポンコツっぽいわ」と判明するのもフフフ、ご愛敬っていうんですかね。
ビジュアル的に凜として可憐、話の最初から最後まで主要人物として関わり、その臨終も南斗水鳥拳のレイのごとくすずやかだった(←あくまでもバトル比喩です)住吉さくらは2012年前半のチャンピオンを華やかに飾ったと思います。
2位『ブラック・ジャック 〜青き未来〜』より、ブラック・ジャック
秋田書店 (2012-10-19)
作品『ブラック・ジャック 〜青き未来〜』はシナリオが『ヒストリエ』『寄生獣』の岩明均、作画が『不安の種』『オフィス北極星』の中山昌亮という大実力派タッグで「数十年後のブラック・ジャックを描く」という話題性満点の夢の連載でした。
で、いざフタを開けてみるとたびたび休載するし載っても話が進まないしで、この2人話も絵も丁寧すぎて週刊マンガのペースにまったく合ってないと判明し、あげく単行本ではいかにもわけあり気味に脚本クレジットが「シナリオ原案:山石日月」に変わっているという、まあ、あんまり誰も得をしなかった作品でしたが、連載ペースを忘れて単行本(全1巻)でまとめて読むと非常によく練られた大作だと思うんですよね。
ここで描かれたブラック・ジャック(壮年)、考えたら原作のブラック・ジャックってわりと短気だったよな(たぶん1話完結で話を早く動かすのに必要な機能だったんでしょうけど)と思い起こすとぐっと落ち着いた大人のしぶみ。トシはとってもいい男、年輪が生む余裕がさらにかっちょ良く、ブラック・ジャックのありえる未来像として、読者の目から見て理想の大人像として、たいへん魅力的でした。
3位『りびんぐでっど!』より、灰田もなこ
さすが人外ヒロインへのアグレッシブさに定評のあるチャンピオンですが、しかもちょいラブコメだというから驚く。なにぶん体の接合がゆるくしばしば肉食の本能に支配され野鳥にさらわれやすいヒロインなので(ヒロインの条件としてだいぶ下のランクに位置すると思う)ラブらないコメディ回も多かったですが、それでも話の起点になり事態を引っかき回すキャラでありながら悪気もイヤ味もなく、人の良いかわいらしい立派なヒロインでした。
ちなみに僕は「もののふ口調とかの意味じゃなく、むしろ昭和の文豪みたいな物々しいボキャブラリーがいつもじゃなく話しことばの中に唐突に飛び出す女の子萌え」という「萌え属性」のひとことで区切るには限界を感じる嗜好のもちぬしなのですが、その点でも素晴らしいヒロインでした。問題は彼女以外もこのマンガに登場する女子はたいていそうだった(作風)ことですが。
さあ、キミのお気に入りの作品やキャラクターはランクインしたかな?(わりとどうでもよさそう)
2013年もチャンピオンにとって雄飛の年……というか、悲しいことのない年であるといいですね(チャンピオン読者特有のネガティブ思考)。










































































丸井みつば
丸井ふたば
丸井ひとは
杉崎みく
吉岡ゆき
宮下
松岡咲子
緒方愛梨
伊藤詩織
加藤真由美
佐藤信也
千葉雄大
矢部智
栗山愛子
海江田先生
野田校長
丸井草次郎
杉崎麻里奈(杉崎母)
杉崎龍太(杉崎弟)
佐藤あかり(しんちゃん母)
千葉和実(千葉氏母)
吉岡紗江子(吉岡母)
吉岡純次(吉岡父)
緒方一郎太(おがちん兄)
メグちゃん (龍太クラスメイト)
鴨橋オリオンズの監督
オリオンちゃん
チクビ
ガチレッド
ガチブルー
ガチピンク(白浜あずさ)
ガチイエロー
ガチブラック
ゲスラゴン
桜井のりお(作者)
それにしてもこうして23人の描くBJ見てて思ったけど、BJって手塚キャラの中でも特に「記号」的な特徴の多いキャラクターだなあと。ツギハギは当然として、ツートンカラーの髪、リボンタイ、黒コートと、マンガキャラの原則「特徴はひとつ大きいのだけを用意して、あまり散乱させない」に立ち向かいかねない造形。マンガ『ブラック・ジャック』自体が作家としてかなりダメまっていた時代の手塚治虫が半分くらいヤケになって描いてみたら成功しちゃった作品っていう話は聞きますが、追いつめられてこれでもかとばかりに特徴をぶちこんでみたとかそういうことだったりするんだろうか。
『史上最強の弟子ケンイチ』の17巻は基本的にはラグナロク編終了後の中継ぎの巻で、クリストファー・エクレールとの対決(を見学する)話が主なのですが、僕がこの巻を読んで一番心に残ったのはあまりにもチョイ役の「死合い場の見届け人の僧」だ。なんか知らんが好きだ。妙に好きだ。17巻のことを思い出そうとすると真っ先に出るのはこの人だ。顔だろうか。セリフだろうか。人生で一度でいいから「死人はできるだけ だしてもらいたくない!」とか言ってみたい。人生でそんなセリフを言う場面がいったいあるのだろうか。

たまたまのぞいた本屋。やけにいかした装丁の表紙にオビが唐沢俊一先生大絶賛という本『キカイ探偵』(福原鉄平 著)を発見。しかしカバーかかってて中は確認できないし連載誌はその本屋に置いてないコミックバーズだしそもそもコミックバーズ読んだことないしで、情報ゼロのまま購入。俗に言う表紙買いである。「ああまた表紙買いなんかしちゃったこんなの失敗するに決まってるじゃんか」とか思いながら。
なんの因果か『ガンダム・ファクトファイル』(*1)創刊号から買い続けてるんですが、今週号の最後の方に
ヤベエ、マジオモレェ!(『フリオチ』風に)
えーと、あー。ちょっとと言わず相当にショックなんですけど、なんつうかサンデーに『焼きたて!! ジャぱん』というあえてジャンル分けするならグルメ漫画に相当するが絶対それ違う(*1)と僕は思うマンガがありまして、それはまあいいんですよ。
でまあその一方で、どれみの直前にやってる番組であるところの仮面ライダーアギトは、こう、本当に最終回きちんと面白くまとまるのかとかなにしろ例の『クウガ』の後番組だし例の井上監督だしで正直な話ちょっと前のアナザーアギト最終話の件はさておき今後に関してはおおいに不安なわけですが、でも今日はおジャ魔女どれみのおかげで実にスッキリした気分で終わることができました。感謝。
そんな具合で前回に引き続き至福の時間が到来しっぱなしなんですけど、それにしてもなんで11巻の夢幻君はこんなに嬉しそうなんでしょうか。巻末で作者の人も書いてますが。想像するにこれは(*1)こんなときでもないと呼んでもらえないし久しぶりに孫の顔が見れるしついでに釣りもここのところずいぶんやってないしでこの機会が嬉しくてしかたがなかったに違いなく、お、お祖父さんそんなカワイイことでどうするんですか! 素晴らしいですよ! この分なら奥様とも (家に帰らない亭主なりに) それなりに仲良くやっていたのではと思われて心配の吹き飛ぶものがあります。ちなみに僕の中では一応所帯を持っていたということになっているんですが。万歳。
しかし結局あれですか、『ライオン』のあの娘さんは九鬼子じゃなかったっぽいですね。「バカみたい魔法使いみたいな帽子」とか言ってるし。いやじゃあ魔子か。あの少女は魔子だったのか。戦後十年そこらで日本があれだけ復興してるもんなのかどうかよくわからないけど、もうこのさいだからそういうことに決定しました。むろん自分の中だけで。
![[画像] 囚人番号MA-28050](../image/ct010609a.jpg)
![[画像] 男囚か!?…こいつ…!! (間違えようもなく)](../image/ct010609b.gif)
それにしてもなんだろうこの時期のジョジョの凶暴なテンションは。時期的にはまさに絶体絶命 (連載が) という頃だったと思うんだけど、それを反映したんだかなんなんだか毎回毎回1話ごとに絶体絶命の目にあってるんですがブチャラティ一同が。あるいはボスが。凄まじいストーリーの高密度っぷりですが話のつじつまは時々あってません。




【1】青紫蘇
CYNTHIA_THE_MISSONおもしろいですよねー
終わったが残念です><
(2009.05.21 11:24PM)
【2】杉浦印字(サイトマスター)
『ミカるんX』も負けずに面白いですよ!
今月のチャンピオンRED見て僕は高遠るい先生に心底ついていこうと思いました。
あとシンシアも第一部完なだけで第二部きっとあるし! あるよね?
(2009.05.21 11:28PM)
【3】青紫蘇
第二部はきっと地下トーナメント編なんでしょうねw
ミカるんXもなんだか第一部完間際みたいですけども続きますよね?続きますよね?
あ、今月のチャンピオンREDといえば読み切りのハラム伝が最高に不謹慎で素晴らしいと思いました。
(2009.05.24 04:06AM)
【4】杉浦印字(サイトマスター)
祭丘先生はRED向けの人材すぎて神々しいです。
いつか出る『シャングラッド神紀』2巻の巻末に『ハラム伝』も掲載される……そんな夢をオレは見ているんだ。(※いろいろ高いハードル)
(2009.05.24 08:27AM)